サマーデイズ


蒸し暑い夏の日。太陽は一向に休む気がないらしく、真っ昼間の今は暑さのピークになっていた。扇風機から送られる生温い風も火照った身体にはやけに冷たく感じられ、じんわりと汗をかいた素肌の何とも言えない不快感に思わず顔が歪む。そしてこんなに暑いにも関わらずべったりと正面から抱きついてくるやつにも少し腹が立って、腕を回した背中に爪を立てた。


「…っ、いたいよ…」

「痛くしてんだ」

「はは……だろうね…」

「こんな暑いのによくひっつこうだなんて思うよな……」

「暑すぎてなんかもう……麻痺しちゃった」

えへへ、なんて無邪気に笑ってみせる天馬に聞こえるように盛大にため息をつくと、剣城ひどいよーと言う声が上がった。


「……せっかく遊びに来たのに何もやる気起きねぇな…」

「ねー……」

「まあ、特別何かやりにここに来たわけじゃねぇけど」

「ひどいなあー。あっ、そういえば秋ねぇがかき氷作るって言ってた!」

もらってくるからと言ってようやく離れ立ち上がった天馬にひらひらと手を振った。

そしてしばらくして帰ってきた天馬の手にはそれぞれ赤と青に彩られたかき氷が二つ。


「俺はいちごで、剣城はブルーハワイね」

そう言って鮮やかな青色のかき氷を渡され、二人でベッドに座りながらそれを口に運ぶ。久しぶりに食べるその冷たさに舌の感覚がなくなりそうになる。

「…っ、つめて……」

「頭キンキンするね」

部屋の中だとは言え日差しが強く差し込み、ただでさえ溶けかけていたかき氷はすぐに液体になってしまう。それをスプーンでぐるぐるとかき回しながらできる渦を眺めていた。天馬は早々と食べ終わってしまったようで隣からガラスの器の底をスプーンでつつく音がきこえる。


「剣城食べるの遅いよ」

「お前が早いだけだろ」

「ずっとスプーンでかき回してるだけじゃないか」

「これもなかなか楽しいぞ」

「そういうことじゃないってー」

そう言いながら天井を見上げる天馬。投げ出した足をふらふらと上下させている。


「ベッド揺れて食べづらいんだけど」

「早く食べない剣城が悪い」


あついーとうわごとのように繰り返し、とうとう隣に座る人物は大の字でベッドに倒れ込んでしまった。それに伴い大きく波立つ器の中の液体を眺めていた。


「……ねー」

「なんだ」

ぐるぐるとスプーンでかき回す手を止め、今や完全な液体となってしまったかき氷だったものを一気に喉に流し込む。

溶けてしまったとはいえ火照った身体にはちょうどいい冷たさでそれは喉を通り越し胃の方までも冷やしていく。


「何で剣城遊びに来たんだっけ」

「……特に何かしに来たわけじゃないけど」


とそこでふと頭に浮かんだ言葉を何の考えもなしにそのままあとに続けた。


「お前に会いにきたのかなあ」

外では相変わらず太陽がぎらぎらとこちらを照らしているし、風の吹く音は聞こえるがそれは涼しいとは言い難い生ぬるいもので。家に帰る時までに少しくらいは涼しくなっているといいなと頭の片隅で思う。


「…………」

「……おい」

いつまでも返ってこない反応に、思わず隣で寝そべっているやつの顔を覗く。冗談でしょ、と笑い飛ばしてくれないと報われないじゃないか。

と、覗き見た顔は驚いたようなまぬけな顔で。なんでそんな、顔を赤らめているんだと思った所で目が合った。


「なんだその顔……」

目線を俺に向けたまま、おもむろに天馬が口を開く。どくどくとなぜか心臓がうるさく脈打つ。


「お、俺も剣城に会いたかったよ」

だから呼んだんだ、


「えっ……」

今度はこっちがそういう顔になる番だった。お互い固まり見つめあうことしばらく。そしてはっと我に返った。額に浮かんだ暑さとは違う汗を腕で拭う。


「なっ、何言ってんだ……やっぱ暑さで頭どうしかしたか」

「……えっ……もーひどいよ剣城ー」

そう言って最初のように腰に抱きついてくる天馬。

その腕が少し熱くて自分の身体が少し強張っていた理由は分からなかった。

心臓の鼓動も依然として収まる気配はなく、暑さとは関係のない汗も止めることはできなかった。

「暑いんだよ……」

ただ、そうやって悪態をつくのが精一杯だった。




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過度なスキンシップはするけど、好きっていうのを自覚してない天京ちゃん。前半と後半で書いた時期が違うのでちょっと雰囲気が違う感じでいきなり終わる感じですwやまもおちもないですが、リハビリということでひとつ許してやってください(´□`)


13.06.16


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