stick stick


「剣城、剣城ー」

そう歌うように名前を連呼しながら軽い足取りで部室へと入った。


「ああ?」

すると、案の定俺のお目当ての人物は怪訝そうな顔でソファー越しにこちらに振り返った。


「何だよ。人の名前何回も呼びながら入ってきて。」

「剣城! これ!」


そう言って後ろ手に持っていたパッケージを剣城の前に突き出す。


「……なんだこれ。」

「これはこれでしょ。あっ、もしかして剣城はいちご味がよかったのかな……」

「いや、だから何?」

「なにって何? これと言ったら、今日と言ったらやることは一つ!」

「……ん?」

「ポッキーゲームでしょ!」

「……なにそれ。」

「……え、もしかして知らない?」


剣城のその言葉を聞いた途端、全身から力が抜けた気がした。

手に持っていたポッキーの箱も心なしか寂しげに見える。


「あっ、じゃあ教えてあげるから!」

「おう。」

「まずこれを……」


ポッキーの袋を破り、一本を取り出す。そして自分で片方の端をくわえるふりをする。


「こうやって、端っこをくわえる。それで、剣城はもう一方の端をくわえればいいの。あとは食べていくだけ!」

そう言い、持っていたポッキーを剣城の手に握らせた。


「……でも最後は……」

「んー……まあそういうこと。」

ふざけ半分で目を瞑って唇を突き出すと、次の瞬間には剣城の平手打ちが俺の頬に飛んできていた。赤くなったであろう頬がじんじんと痺れるような痛さを訴える。


「いったー……ひどいよ!」

「ひどいのはどっちだ! そ、そんな変なことさせようとしてたくせに。」

「だって、いっつも剣城自分からしてくれないから……」


キス……、と言うと自分が情けなくなってしまい、つい視線も俯き、気分も沈んでしまった。

よくよく考えれば、ポッキーなんて道具を使って剣城にそんなことをしてもらおうという考えが愚かだったなと。


「……ごめん。嫌な思いさせて。」

そう言いながら踵を返した。


「おい、ちょっと待て!」

するとソファーから立ち上がった剣城に肩を掴まれ、振り返ると、唇に柔らかな感触。そして一瞬で離れていく剣城のそれ。名残惜しかったけれど、甘い余韻が唇に残った。


「……っ! つ、る…ぎ?」

「……言ってくれたら、いつでもしてやるっていうのに……」

ポッキーを片手に握りしめたまま少し頬を赤らめながら言う剣城がたまらなく可愛いくて剣城が話し終える前にその身体を抱き締めていた。


「あっ、おい馬鹿っ……」

「剣城にそう言ってもらえるの本当嬉しい。だから、ね?」


そう言って自分の唇を指差して首を傾げると、ぎこちなく再び剣城のそれが近付いてきたのが分かり目を閉じた。





「………で、このままだと俺ら部室入れないんだけど。」

「まあまあ、倉間もそう言わないで。いちご味のポッキーあげるから。」

「……ありがと。ところで霧野、神童は?」

「ああ、これ見てまた泣きながら倒れちゃったから保健室。狩屋に見とくよう頼んでて心配だから俺行くぞ?」

「俺も行く。ここに一人にしないでくれ。」



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ポッキーの日で天京。今年は6個も1があってめでたいので!いちご味のポッキーってハート型ですよね?可愛いくておいしいです(*´д`*)


11.11.11

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