見ているだけでいらいらするほど、あいつは輝いていた。挫折とか失意とかそんなもの全く知らないといったように、希望の光だけを映す瞳。まっすぐ前を向いていて。いらいらした。

俺なんかとは全然違う世界にいて、底辺にいる俺なんか眼中に入らない。だからいいと思っていた。そんなやつは幸せに毎日を過ごし幸せな人生を歩めばいいし、俺もそんな人生を歩めるとは思っていなかったから。でも。


「………手、離せよ。」

「やだ!」

「……なんで」

「だって手離したら、剣城どっか行っちゃうでしょ。」

こいつは何かと俺に構ってくる。今だっていきなり腕を掴んできたかと思うと行かないで、なんて言って。

お前なんかには分からない。分かっちゃいけないんだ。俺は卑しくて汚い世界ばっかり見てきて、もうお前と同じような澄んだ瞳で物事なんて見れないから。住む世界が違うんだから。


「……俺なんかに構うなよ」

そう言うと目の前の人物はひどく悲しそうな顔をして俯いてしまった。


ほんと、いらいらする。

何でも一生懸命努力すればなんとかなるとか思っていて。なんとかならないこともあるなんてことも知らないで。それを他人にまで、俺にまで求めてくる。


「うぜぇんだよ……」


「剣城。」

そう言って再び上げられた松風の顔は真剣で、いつものへらへらした顔からは想像もできないものだった。


「泣きたい時は泣いていいし、辛い時は頼っていいんだよ?」

そんな優しい声色で、俺の顔を覗き込んで手の平をぎゅっと握りしめた松風の手。

そんなことしても、世の中にはどうにもならないことがある。それが変わることなんてないのに。そんな期待に輝いた目をして。いらいらする。

でもその目を見た途端、胸の内から湧き上がるような感情。


「……お前、ほんと、いらいらする。」

そんな情けない自分に一番いらいらしていて。


「なんだ、剣城だって泣けるんじゃん」


溢れそうな胸の中、皮肉の一つも考えられずに。

気にくわないその手を弱く握り返していた。


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自分の弱さに気付かない京介くんとか可愛いですよね´q`お題と少し逸れてる気がしないでもない……


11.09.02


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