レモンドロップ


通い慣れた白い病室の扉を開ける。一番奥のベッドの上から窓を眺めている人物に兄さん、と声をかけると柔らかい笑顔で振り向くのが見えた。


「ああ京介。今日は早かったな。」

「うん。今日は部活終わるのが早くて。」

いつものように壁に立てかけてある椅子を出してきてベッドの傍に腰掛ける。兄さんが見ていた窓の外に目をやると、まだ沈む前の太陽が病室を照らし、ベッドの傍らの花瓶に影を作っていた。


「なら丁度よかった。京介にあげたいものがあって。」

そう言ってポケットの中をがさがさと探し始める兄さん。しばらくしてポケットから出てきたのは小さい包みだった。


「今日看護師さんにもらったんだ。」

兄さんの手の中できらりと光る飴玉の包み。


「あめ……?」

「うん。いっぱいいろんな色のをもらったから。」

京介にはこの色あげるね、と兄さんから手渡されたきらきらしたあめ。


「……兄さんの目の色だね。」

「京介もだよ。透き通るような綺麗なレモン色。」


手の中の飴玉の袋を破り、口に放り込む。口の中で転がすと甘酸っぱい甘さが広がった。


「ん、おいしい。」

「それはよかった。」

「………っ、」

すると突然、ぎゅっとベッドの上の兄さんに抱き締められた。ふいに崩れそうになった体をベッドに手をつきバランスをとる。


「な、何? ……兄さん?」

「うーん。何か、そういう気分。」

「そういうって?」

「京介を甘やかしたい気分。」


そう言い俺の頭を優しく撫でる兄さんの顔は悪戯っぽく笑っていて。


「……もう、仕方ないなあ。」

「そんな言い方じゃ俺がわがままみたいじゃない?」

「兄さんのわがままでしょ。」

「ふふ、そうだけどさ。」


口の中の溶けかけたきらきらした飴玉からはまだ甘酸っぱくさわやかな甘さが広がっていた。


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剣城兄弟可愛いすぎます´q`優一兄さんの包容力は無限大です。


2011.08.31


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