狼だから、


「はぁ……大丈夫だってのに…」

神童の心配性には困ったものだ。前回の試合で俺が足を痛めたからって、今日の練習で少し転んだだけなのに不安そうな顔をして、霧野はまだ無茶したらだめだ、とか言って。そんな神童の言葉で俺は無理矢理部室で休ませられることになった。もうあまり痛くない足で部室に向かい、ドアを開ける。するとそこには珍しい光景が広がっていた。


「……寝て、る…?」

剣城がソファーですやすやと寝ていた。規則正しい寝息を立てている姿は完全にリラックスしきっているようだ。普段部室にもあまり来ることがない剣城がこうして、誰もいない部室で穏やかに寝ているのがなんだかおかしくってついついその寝顔を眺めてしまう。


「まつげ、長いな……。」

いつも眉間に寄っているしわもなく、改めて見ると整った顔をしていた。白い肌に長いまつげ。少し開かれた口が可愛らしい。


「ふふ、……こうして見ると幼い、な。」

気付けばソファーの傍にしゃがみこみ、まじまじと顔を覗き込む形になっていた。


「……………。」

そこで少し、悪戯心が働いた。

立ち上がり、ソファーに手をつき剣城に顔を近付ける。ソファーが俺の体重でわずかに下に沈む。そして剣城の額に唇を落とした。ちゅ、とわざと音を立てたそれを一瞬で離す。


「……っ!」

それと同時に飛び起きた体をかわした。


「あ、おはよう。」

「……今、何した?」

「何って……お目覚めのキス?」

唇に手を持っていき、ウインクをひとつ。するとぼん、と音が出そうなほどに突然顔を赤らめる剣城。


「……は?! ふ、ふざけんな!」

「何だよ、そっちがこんなところで無防備に寝てるのが悪いんだぞ。」

「な、何でそうなるんだよ!」

「んー。だって、」




男は狼だから、気を付けなさい





「って教わらなかった? 食べちゃうぞ、がおー。」

「……冗談に聞こえないんだけど。」

「えっ、本気だけど。もしかしてそうされたい?」

「んなこと言ってねぇ!」

「やっぱり後輩いじりは楽しいな!」


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あんな顔して男前な蘭丸が好きです。それに比例して剣城が乙女だとなおいいです!


11.08.22


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