レイニーレイニー
「あー……雨、まだやまない。」
今日は朝からずっと雨が降り続いていて、結局部活まで降り止まず今日の練習メニューは室内で筋トレ。教室の窓に吊したてるてる坊主を恨んでも仕方ないけれど、やっぱり外でみんなでボールを追いかけていた方が数倍楽しい。
「こら、松風! よそ見しない!」
窓の外を見てはそんな風にキャプテンに怒られ、それを何回も繰り返していたら、あっという間に部活は終わりもう帰る時間になっていた。
「……まだ降ってる。」
最後までロッカーの整理をしていた俺はひとり、傘をさして部室を出て歩き出す。昔から雨はあまり好きではない。じめじめしてるし、外で遊べないし。気分も沈み、はあとため息をついた時、ふと暗い中歩いている人影を見つけた。
「あ、剣城ー!」
そんなに遠くなかったからか、俺の声を聞いた剣城がすごい顔で振り向いた。
「なんで傘さしてないの!」
駆け寄った剣城は傘をさしていなくて、全身雨に濡れていて。
「……忘れた。」
「ほら、入って。」
少し上にある剣城の頭を無理矢理傘に迎え入れ、そのまま二人で歩いていく。
しばしの沈黙。
横にいる剣城の顔を盗み見る。白い肌がいつにもまして青白くて、きっと雨で冷えてしまったのだろう。
「……なっ、」
「ほっぺ、冷たいね。」
「さ、触るな!」
「じゃあ雨なんかに濡れないでよ! 風邪ひいちゃうよ?」
「お前には関係ないだろ。」
「関係なくないよ!」
触れた頬は見た通り冷たくて。
「だって手だってこんなに冷たいし、心配だよ。」
そう言って手を握って剣城を見上げると、驚いたような顔をしていて。その顔を見つめていると、みるみるうちに自分の顔に熱が集まるのが分かった。
「あ、こ、これ貸すから! じゃあ!」
それを認識すると途端、恥ずかしくなって剣城に傘を押し付けて走り出していた。
おい、待てと自分を呼ぶ背後を無視して走る走る。
「なにこれなにこれ……」
だって剣城が見たこともない顔するから。いつもみたいに目つきも悪くなかったし。なんだ剣城だって驚くことあるんだって、普通の反応だってあるんだって驚いただけなのに。
この鼓動の早さに理由がつけられない雨降りの日。
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雨と青春が大好きです!だけど書くの難しい……。
11.08.20
11.08.22 加筆