※倉京というか南←倉←京前提の倉京みたいな感じです。
誰もいなくなった部室。ロッカールーム。いつも一緒に帰ろうとうるさい松風の誘いをなんとか断り今に至る。全員が帰ってしまった後の部室はひどく不気味で静かだった。
「……まだいたのかよ。」
そしてロッカールームの扉が開けられ入ってきたのは、今の今まで俺が待ち続けていた人物だった。
「……倉間、先輩。自主練お疲れさまです。」
「剣城……帰らなくていいのか?」
少し疲れたような顔でタオルで汗を拭きながら椅子に腰掛ける倉間先輩。
「待ってろって言われたんで。」
他でもないあんたに。
そう付け加えると目の前の人物からはあとため息が零れた。
「いや、本当に待ってるとは……」
「いいですよ。待ちたくて待ってたんで。」
「ふーん。」
つまらなそうに頷いたあと、倉間先輩は立ち上がり、目の前にいる俺の肩に頭を預けてきた。そして後ろに回される手。
「……ごめん。」
「…何がですか?」
そうあえて聞いた。本当は彼が何に対してそんな感情を抱いているのか知っている。けれど、直接彼の口から聞きたかった。
「……寂しいだけ、なんだよ。」
倉間先輩の口から零れる呟きは二人だけのロッカールームの暗闇に溶けていく。
「本当に……情けないよな。」
南沢さんはあっちで上手くやってるのに。
そう言いながら抱き締める力を強くする倉間先輩の手は、俺の身体ではなくもっと他の誰かを抱き締めている。
「だから、ごめん。」
「…………。」
「それ以上の感情はないから安心して。」
その言葉と共にだんだんと後ろのソファーに押し倒されていく身体。ぎしりと軋む関節と胸が痛かった。
「……知ってますから。そんなことくらい。」
痛いくらいに知っている。痛感している。
「そう。なら良かった。」
「南沢先輩の番号とったの、俺だし。」
「それは関係ないだろ……。」
「でも……せめてもの罪滅ぼしだと思わせて下さい。」
きっとこれは南沢先輩という、南沢先輩の番号という道具を使って、自分自身の欲望を満たそうとする俺への罰。
彼の心は手に入らないけれど、表面上の触れ合いならできる。しかし、一度触れてしまえば全てが欲しくなってしまうもので。この曖昧な、進みも下がりもしない距離をもどかしくも思ってしまうもので。
「あ……。」
ソファーに沈んだ身体から天井へと手を伸ばす。あまり高く感じていなかった天井がこんなにも遠かっただなんて、今更ぼんやりと思った。きっとあの天井には一生手が届かない。そう諦めて、手を彼の背中へと落とした。
さみしさ売買
title:発光
南←倉←京みたいな倉京。この関係をいまいち割り切れていない京介とかいいですね!
11.11.05