ずっとあいつを見ていた。


グラウンドを走る姿が一番綺麗だった。めったには見せない笑顔が素敵だった。悲しく歪む顔を見るとこっちも悲しくなった。

一人じゃ抱えきれないほどいろいろなものを抱えながら、誰にも弱さを見せないで強がっているのが目に見えて。だから、人一倍頑張っているあいつの姿に目を奪われたのかもしれない。


気付いたら目で追っていた。試合の時は誰よりも走り回っていたし、練習だって影でこっそり自主練していたのを知っている。他のシードのやつらなんかよりもずっと真面目に取り組んでいた。誰のために、何のためにそんなに頑張っているのか分からなかったけど、俺はただ単に頑張っている剣城を見るのが好きだった。


ずっと、俺は剣城を見ていた。


「おい、剣城。」

「………何だ磯崎か。」


ああ、やっぱりこいつは変わってない。いつも一人でいるくせに、どこか悲しそうな強がった顔をしている。

するとその顔がふと、横を向いた。


「ん、ああごめん磯崎。俺呼ばれてるから。」

そう言って剣城が向かう先には笑顔で手招きをする人影。

「あ、うん……。」


あいつは確か雷門中サッカー部の一年だった気がする。あんなに剣城に馴れ馴れしくして大丈夫かよと苦笑して、再び剣城に視線を戻した時。


心臓が止まるかと思った。


剣城が、笑っていた。今まで見たどの笑顔よりも嬉しそうに。そいつに呆れたようにため息をつきながらも笑ってみせる剣城は、俺の知らないものだった。


「なん、だよ……」

そう頭で理解すると、どんどん胸が空虚さに浸食されて。それに堪らなく苛立って、ぎゅっと唇を噛み締めた。


ずっと、俺の少し前を走っている剣城を見ていた。けれど、その距離は気付かない内に広がっていたみたいで。もう届かない場所にまで行ってしまったあいつを見て。

馬鹿な俺は今更気付いたんだ。



確かに恋だった





title:確かに恋だった



磯→京というか天京←磯です。切なくて報われない子大好きです。

11.08.19









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テーマ「人外ファンタジー」
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