「ねぇ、手ぇ繋ごうよ。」
夕日が少し傾いた頃。いつもの部活の帰り道。となりで上機嫌に歩いていたやつが突然、そんなことを言い出した。
「………はあ?」
それまで足元を見て黙って歩いていた俺も思わず顔を上げてしまう。目が合った顔はこちらが驚いたことに驚いた、という顔をしていた。
「なに? それより剣城、手。」
「な、何でお前なんかと繋がないといけねぇんだよ!」
危うく掴まれそうになった手を引っ込めて、ポケットに突っ込んだ。そうすると松風は、ひどく悲しそうな顔をしてこちらを見上げてきた。捨てられた子犬のような、とはこのことを言うのかもしれない。
「ええ! ひどい!」
「じゃあ何で手、繋ぎたいんだよ。」
「え、………だって…」
すると松風は少し気まずそうな顔をして黙った後、ゆっくりと口を開いた。
「……剣城が、暗い顔してたから。」
「ああ? だから何だよ。」
「だから……お、俺が慰めてあげようと思って!」
そう必死に叫ぶ松風の、意外に真剣な顔に少し面食らってしまう。
「う……。」
「ほら、手。何で暗い顔してるか知らないけど、二人なら悲しさも半分だから。」
差し出された手は日に焼けていて、健康的な色をしていた。
「し、仕方ないな!」
「ふふ、ありがとう剣城。」
満足そうな松風の笑顔を見た途端に熱くなった頬を隠すように前を向く。
ポケットから出して強引に握った手は温かくて。
はじめての温度
(何でも許してしまいそうになる。)
title:確かに恋だった
友達以上恋人未満な天京。名前呼びもいいけど、名字呼びな二人も初々しくていいと思います!
11.08.18