本日何度目になるかも分からない欠伸をして、黒板の上に目をやった。時計というのは早く時間が過ぎてほしい時ほどいつも決まって進むのが遅い。授業中の今も相手のことを考えると、自分自身がそわそわと落ち着きを失うのが分かる。そして早く姿が見たいと心がざわめいて授業の内容なんて全然頭に入ってこない。
時計を見るとちょうど秒針が一番上の12に重なる所で、待ち遠しかったチャイムの音が心地よく耳に響いた。
「…やっと、終わった!」
誰よりも早く教室から出て、隣の教室へと駆け出す。外れそうな勢いで、むしろ自分が外してやるといった勢いで乱暴にドアを開けると、お目当ての人物は教室の隅の机で一人つまらなそうに携帯をいじっているところだった。
「つーるーぎー!」
その人物に大股で近付く。俺の姿を捉えた途端呆れた表情になるのはいつものことで、全く気にならない。
「また来ちゃった。」
「またって……これで今日の休み時間全部来たことになったな……。」
「えへへ…」
これだけ会っても物足りない。剣城は俺との会話を放棄して再び携帯の画面とにらめっこ。自分のことをしている剣城をこうして眺めているだけであっという間に短い休み時間は終わってしまう。
「じゃあ、部活でまた!」
「ああ…」
全く俺を見ない剣城に手を振り教室をあとにする。自分の教室に戻るといつものように呆れ顔の信助に出迎えられた。
そして放課後の部活の時間。ボールをひたすら追いかけてドリブルの一人練習。グラウンドの周りをぐるぐる走りながら辺りを見渡す。狩屋はまた信助の練習に付き合ってるみたいだし、他の先輩たちはゴール付近でかたまって練習している。すると俺の視線は自然とその姿を探し始める。
「あれ……あっ、」
そして開いた入口のドアから剣城が中に入ってくるのが見えた。
「剣城! 今日遅いけどホームルーム長かったの?」
「またお前か……べつにいいだろ。」
こちらを一瞥しただけで、剣城は自分の練習に入ってしまった。
「……っもう…つれないなあ。」
もう少し俺の話を聞いてくれたらいいのに。一つ深呼吸して再び走り出す。目の端に映った剣城は一人でリフティングの練習を始めていた。
「……っ、おい…」
しばらくの間走ってドリブルをしていると、剣城に声をかけられた。
「な、何?」
いつも一方的に話しかけている分、話しかけられた驚きで声が少し裏返る。
「……なんなんだよ…」
「……え?」
「……だから! ずっとこっち見てきてなんなんだよ…」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ剣城。その声を聞いたキャプテンがこちらに走ってくる音。
「おい! こんな所で喧嘩はするなよ。」
「ち、違うんですよキャプテン。剣城が……」
「だってお前が…」
「それはごめん! でも自分でも分かんないんだ。」
気付いたら剣城のこと見てるし、意識しなくても剣城のこと考えちゃうし何でも剣城はどうするのかなって最初に思ったり…
「……ただそれだけなんだけど…」
「……っ…」
「あっ剣城、待って!」
くるりとこちらに背を向け、走り去ってしまう剣城。
「……おい天馬。」
「キャプテン……俺おかしいんですかね?」
好きすぎるんですがこれって病気ですか?
「いや……病気では、ないな。」
「そうですか。ありがとうございます! ああ……よかったー。」
「良くはな……いや、いい。練習再開してくれ。」
title:確かに恋だった
剣城大好きな天馬くん。純粋なstkさんになりそうで怖いですw
12.01.01