―なさけねぇなぁ…―
ぐちゃり、血肉を裂く音
―お前に背中を守られるったぁ、俺もヤキがまわっちったか―
曇天に響く乾いた音
―冗談だ、嬉しい限りだよ―
虚空を染める人の悲鳴
―なんて顔してんだよ―
色の違う瞳が揺らめいた
―笑え、俺は笑ってるお前が好きだ―
ああそうだ
あの日
あの瞬間
僕はあの人のために笑い続けることを誓った
それがあの人への感謝の意であり
自分への罰であり
未来への契りだと
でも
あの人、アノ人、アノヒト……
――ダメダ、思イ出セナイ……
一体何の罰なのか
一体何の契りなのか
何もかもが思い出せない
僕の記憶は、
日に日に薄れていっているとでもいうのだろうか
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