「サクヤ……これは命令だ!全員必ず生きて帰れ!!」
「いやぁああああああぁあああぁあぁぁああ!!!」
「サクヤさん!行こう、このままじゃ全員共倒れだよ!」
「違う…違うの……パパ…ママ……私そんなつもりじゃ…」
「早くしろ!!囲まれるぞ!」
何があった
一体どうした
何故アリサは錯乱している?
何故サクヤさんは叫んでいる?
何故ソーマは化け猫を斬っている?
何故コウタはサクヤさんを引っ張っている?
何故リンドウは…閉じ込められている?
そうだ、今日は、あまりにイレギュラーが多かった
討伐目標であるアラガミの誤った伝達
同じ区域において二つの小隊の別行動
そしてそれらをリンドウですら知らなかったのだ
アリサは上の空だった
いつもなら僕を睨みつけるかコウタを馬鹿にするかをしていたのに
その時はまったく僕らに目もくれなかった
ただただリンドウの後ろを付いていくアリサに違和感は感じていたのだ
その時点で気が付くべきだったのかもしれない
「レオっ!!!」
リンドウの荒げた声に、ふと我に返る
「お前はアリサを連れて帰れ!!」
『……リンドウ、は』
何かを斬る音、裂ける音
「わりぃが俺はちょっとこいつらの相手して帰るわ!……それとサクヤぁ!」
半分狂いかけているサクヤさんに大きく勢いがありながらも宥めるような声音で叫ぶ
「―――配給のビール、取っといてくれよなぁ!」
その言葉は、必ず帰るから今は逃げろ
そう言っている気がした
アリサを背負い、僕らはどこか血なまぐさいその廃れた教会を去った
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