少し触感はざらついているが、味はとても美味しいトリュフを頬張る

『…美味しい』

「何がだ?」

『アリサにもらったトリュフ……?』

帰ってくるはずのない返答にさらりと答えかけた自分に驚きながらもバッと後ろを振り返れば何故かリンドウ

『…知っていますか?こういうのを、不法侵入と言うそうですよ』

「大丈夫、一応ノックしたから」

…そういう問題ではない気もするのですが

「そういやさっき、顔を真っ赤にしたアリサが廊下を走って自分の部屋まで行ってたんだが、心当たりはあるか?」

『……?いえ、特には』

「……こりゃアリサが可哀想だわ、どんだけ鈍いんだか…」

はい?

「なーんでもねぇよ、こっちの話」

リンドウが何を言わんとしているのか僕には正直わからない

…からほっておこう



そういえば、ウロヴォロスとは、一体どんなアラガミ何だろう

討伐した本人から聞くのが一番正しい方法なのではないだろうか

『ねぇ、リンドウ。ウロヴォロスってどんなアラガミ何ですか?』

「……」

僕がそう聞けば、とたんに厳しい表情に変わるリンドウ

なにか不味いことだったのか

「…」

そのまま無言で僕の座るソファーに近づいてくる。無言の圧力というやつだろうか

本日二度目の空気の重たさ

不意に勢いよくリンドウが僕のシャツをボタンを引きちぎり、はだけさせる

『…っ?!り、リンドウ……?』

リンドウは僕の瞳を見た後ゆっくりと上半身に視線を移す

つられるように僕もゆっくりと自分自身の上半身に視線を移せば、そこにはアリサを庇ったときにできた化け猫の噛みついた跡

傷はしっかりとふさがってはいるものの、まだ傷口だったところは皮膚が薄い

そこを撫でるようにリンドウの指が這う

痛いような、なんだかくすぐったいような感覚に体を捩じる

『リンドウ…くすぐったいです…』

「お前はな…」

『……?』

僕にガーゼを押しつけてきたときと同じ、宥めるような表情に変わる

「レオはな、生き急ぎすぎてるんだよ…そのままじゃ、お前は確実に死ぬ」

どこか否定のできない言葉に少し俯きながらも、話を聞く

「これは、命令だ。もう一度だけ言う。死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。隙があったらぶっ殺せ…だ。」

……それは、前も聞いた

しかし、ウロヴォロスと何の関係があるのだろうか

「お前は、強い。だからいつの日か俺と同じ立場に立って、同じ轍を歩むのかもしれない。だが、まだお前はルーキーだ、死に急ぐことはないんだ」

『……』

「まぁ、その、あれだ。お前はまだウロヴォロスと対峙すんのは早いってこった…わかったな?」

『……は、い』

リンドウが何を意図して言っているかはまだ分からないが、先輩の言うことは、聞くべきなのだ



―レオ―

―お前はもう少し―

―俺の言うことに素直に従いなさい―

―俺はな、お前が大切なんだ―

―傷ついてほしくない、生きていてほしい―

―だから―

―お前は俺のそばで笑ってればいい―

―これからも、ずっと、だ―



「―――――ってなわけだが…おいレオ、聞いてるか?」

『…あ』

意識が、トリップしていた

あの人の、あの人との大事な記憶だ

…あの人…あの人って…



誰ダッケ…?



「こら」

ごつりと拳が頭に落ちる

『っ……!』

「話はちゃんと聞けー」

そう笑うリンドウの目は、決して笑っていなかった







Since there is sweetness, a pain is felt.





(話をしていた時のこいつの目には)
((…あの人…大切だった、あの人))
(まるで生気を感じなかった)



((何故?名前が、思い出せなく、なってしまった))







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