俺とレオが帰還した時、アナグラは騒がしかった

いや、一人の少女が煩かった

「ねぇ!嘘ついてないで、エリックに、お兄ちゃんに会わせて!!」

「……エリックはもう…」

「お父さんには聞いてないわ!早く、早くお兄ちゃん会わせてよ!?」

……エリックの妹と、父親か

報告を済ますべくレオがロビーのヒバリの元へ近付く

その姿を見るなり、妹はレオに走り出す

「ねえ貴方、今朝お兄ちゃん…エリックと出撃した人よね?!エリックは、お兄ちゃんは生きてるよね!?」

なんて、答えるんだろうか。アイツは優し過ぎ――――

『死にました』

「……嘘、だ…!!」

――――…一言で、言った?

言っていた

レオが、真実を、年端もいかぬ少女に、言った

『…こっちに来てください』

「何よ嘘つき!!」

『良いから、……エリックさんのお父さんも』

「なんだね……?」

エントランスの端に行くレオ。嫌がる少女をなだめるように父親はレオのところに連れていく

懐から出したのは、エリックのサングラス

あの時、アイツが拾っていたもの

『この端を掴んで、そして、この持ち主の事を強く考えてください』

「………どうして…?」

『いいから』

「……」

強く言われ、従う少女

一体何を考えているんだ

途端、

レオが淡い光を帯びはじめた



一瞬眩しさを感じる光を放ったあと、そこには淡く消えそうな

エリックがいた





―――エリック?!

「お兄ちゃん?!」

「お前…!」

『――父さ…ん……エリナ…』

ゆっくりと顔を上げたレオは、エリックだった

しかし、時折レオの姿がノイズの様に混ざり入る

「お兄ちゃん、お兄ちゃんなんだよねっ?!」

『…当たり前だろう?』

優しく微笑む表情は、妹と触れ合うエリックそのもので、レオが真似している訳ではないということを物語る

「お兄ちゃんは、死んでなんかないよね!だから今ここに……」

『………ごめんな…』

「……エリック、お前は…」

『ごめんなさい、父さん…僕は、死にました』

「…お兄ちゃ…何言ってるの?生きてるからここにいるんでしょ?!」

『……僕も不思議なんだ。確かに死んだはずなのに、何か細い糸で繋ぎ留められているような感覚で漂っているような感覚で…それがさっき、いきなり明るい光で照らされて、気が付いたらここで立っていたんだ』

「もしや、先程の青年に取り憑いたのか…?」

俺は影から見ている事しか出来ない

一体どういうことなのか

『ああ、何故か彼が……レオクンが光の方に手を引いてくれたんだ』

そう言うと妹の頭の上に手を乗せるエリック

『ごめんな、もう洋服も玩具も買ってあげられない…』

「そんな……本当に、本当にお兄ちゃん…死んじゃったの…?」

黙りこくるエリック……それは肯定の意であることを悟った妹はエリックに抱き着く

「お兄ちゃ……お兄ぢゃん…!」

無言のまま妹を強く抱きしめ、撫でていく

『もう行かなきゃ……何時までもレオクンの身体を使う訳にもいかないからね。父さん、エリナをよろしく頼むよ』

「ああ、任せておけ……」

「お兄ぢゃん…!私、私頑張ってゴッドイーダーになる!アラガミを許さない……お兄ちゃんみだぐ、みんなを守れるゴッドイーダーになっでみせるがら!!」

『あぁ、身体には気をつけるんだよ?風邪を引かないで、早寝早起き……分かった?』

「うん!!」

途端にまた強く光が弾け、消えそこに残っていたのは紛れも無い、レオ

手に握っていたエリックのサングラスが粉々に割れて、砂のように消えていく

『……聞こえましたか…?彼の声……』

力なさ気に笑うレオを見て父親は深々と礼をする

「ええ……おかげで何かスッキリしました……あの馬鹿息子は…死ぬ前でも妹思いなんだから……どうしようもない」

ばっと顔を上げた妹の頭を優しく撫でやるレオ

「貴方…ゴッドイーターよね……?」

『うん』

「私、決めたわ…!ゴッドイーターになる、それで、お兄ちゃんみたいなかっこよくて優しい、人を守れるようになりたいの!!」

『そうか……じゃあ、頑張らなくちゃね』

そういうと優しく笑って妹を抱きしめる

「だから、貴方は私の側にいて…そして、私がくじけそうな時、葛を入れて!私、強くなりたいの」

『いいよ……特訓にだって付き合ってあげる』

「ありがとう……そうと決まったらお偉いさんに早速話しをしに行かなきゃ…いきましょうお父さん!」

「あ、ああ………本当にありがとう…では、失礼」

そういうとエレベーターの方へ歩いていく二人

その二人をレオは何処か寂しげな目で見ていた

刹那

張り詰めていた糸がぷつりと断たれた様に床に崩れ落ちていく身体

「レオッ…?!」

軽く背中を起こし上げ、手をとる

『――そぉ…ま…?』

「お前、さっきのは……」

聞こうとした時、レオの手がスルリと床に落ちていく

「…レオ…?」

『……』

―――返事が、ない

まさか

「レオッ?!」

『……すぅ…』

……寝てやがった

最悪だ

最悪……だ

「チッ……」

とりあえず、部屋に運ぶか



.


<< >>


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -