目が合うだけで



今日は久しぶりに時間が空いた
いつもだったら仕事がないと部活の助っ人に駆り出されるのだが、それもない
生徒会メンバーは各々自分の部活に行っている

特にこれと言った部活に属していないゴーはこれを機に遊びに行っていて、パールはすぐに図書室に引き込んでしまった(ネタ作りだそうだ)

「(久しぶりに見に行こっかな)」

そう言ってオレが足を向けた所は第一武道場だ
いくつかある中で一番大きい
そんな道場にはある部活がやっている

近づくに連れて弾けるような音が聞こえてくる
耳障りに感じる奴も多いかもしれないけど、オレは結構好きだ
とくにアイツが発する音はとくに

「(おっ、やってるな)」

オレは邪魔にならない程度に呟いた
黒く武装した二人がそれぞれの竹刀を交じり合わせている
入口の戸に体重を任せながら腕を組んでそれを眺めた
隣から「レッド先輩こんにちは」と礼儀正しく挨拶してくれた後輩達に軽く手を振った
しかしオレはすぐに視線を戻す

丁度よく彼がやっているのだ
一瞬でも目をはずすのが勿体なく感じた

「(やっぱり皆と動きが違うな)」見とれていると、バチンと高い音が響いて
そして竹刀が弾かれる

「踏み込みが浅い、もっと突っ込んでこい」

竹刀を相手に突き立ててそう言った
本当に仕草の一つ一つがイケメンだ

そう後輩らしい相手に背を向けて彼は面を取った
頬に汗を伝わせている姿はやはり綺麗だ
マネージャーの子がキャッキャと盛り上がっている
オレもそれに混じってやりたいくらい気持ちが高揚していた

「(かっけぇ)」

カッコ良くて、頭が良くて、運動もできる自慢の幼馴染みだ
でも、ある日からか違う感情も芽生えていた
友達とは違う、心臓の辺りが痛くなるような気持ち

「(独占出来れば良いのにな)」

伝えたいな、でも離れていってほしくないから、いつも『親友』のポジションをキープし続ける
もっと近づきたいなんて我儘だ

そんな風に思っていると彼はこちらに気づいた
そして、フワリと笑いかけてくれた
また心臓の辺りが締め付けられる
同時に自分に笑いかけてくれたのが酷く嬉しい


「(今はグリーンのあの笑顔が見れるだけで充分だ)」


あの笑顔が向けられるのはオレだけだと、気づくのはもう少し先の事



緑(→)←赤の話
剣道やってる緑先輩が見たいです
赤先輩は道場の常連客


prev next
- ナノ -