始まりはあの時から



少しずつ視界に靄がかかってくる
意識が薄れていくなか、グリーンの目の前には人影が立っていた

「アンタも飽きないわね、アンタ達にとってここに来ることがどれだけ危険かわかってるんでしょ」

「わかっていながら来るってことは、おめぇもかなりの命知らずだな」

「……黙れ」

頭を強く打ったらしい、どうも頭が回らない
本来はもっと言ってやりたいのに言葉が浮かんでこない
グリーンの目の前に立っている者達は、憐れみ、憎悪、軽蔑、そんなものが混ざったような視線でこちらを見下していた

「わかってるんでしょ、ここはアンタのような坊やが来るところじゃないの。命が惜しいならとっとと帰りなさい」

命令しているような言葉は最後の忠告だと言わんばかりに降ってくる
しかしグリーンは首を縦に振ることはない
それを見たもう一人が口許をつり上がらせグリーンの首元に鋭利な棒状のものを近づける

「だったら死ねよ」

「ちょっ、待ちなさい!!!」

静止の言葉も聞かず、棒状の物からは激しい光が瞬き、それを思いっきり振りかざす
抵抗する力は残っていない
ここまでか、と瞳を閉じて衝撃をまった


――駄目だよ


頭に響くような、だが静かな透き通る声が聞こえた
するとその腕はグリーンの首元間近で動きを止め、そのまま下ろされた
何事かと瞼を開ければ視界の中にまた影が現れた

「それはオレの所有物だ、勝手な事は、たとえお前達でも許さないよブルー、ゴールド」

静かな声の中にはわずかな怒気が含まれており、二人は体を強張らせる

「お前らも、ほら散った散った」

払うように手を振る仕草をすると回りにあったいくつもの気配が消えていった

「レッド……」

「また会いに来てくれたんだな、グリーン」

レッドと呼ばれる少年はブルーとゴールドの間を割ってグリーンの前にしゃがみこむ

「レッド」

「ブルー、ゴールドお前らも少しどっかに行っててくれないか?」

傾げるように尋ねれば何か言いたそうにしながら二人は離れていった

「運が良い奴」

そう吐き捨てて


「俺がいつからお前の所有物になったんだ」

「実際、実権を握ってるのはオレだろ」

そう言ってレッドはグリーンに近づき血が流れる額に舌を這わせる
すると傷は跡形もなく消え去ったのだ

「相変わらずすごいな、この治癒能力」

「オレらは皆そうだよ」

ケラケラと笑う少年は自分達と同じように見えて全く違う存在
こんな治癒能力だって、先程の対戦で感じた身体能力も
全てに置いて、人間とかけ離れていた

「そろそろ本当に死んじゃうよ、オレ達はお前らが大っ嫌いなんだ」

「わかっている、だが俺はお前達との亀裂を修復したいんだ」
「それは一国の王として?」

そう言って困ったように笑われた
初めてあったときから、この少年がちゃんと笑ったところなど見たことがない
いや、彼のことを少年と表すところから間違っているのかもしれない。彼は自分より何十倍も生きているのだから

「一回できてしまった溝を埋めることは難しい、それが長年に渡ってできてしまった深い分……ね」

悲しそうに笑う彼の言葉に、黙って耳を傾けることしかできなかった

「戦争は必ず起きるよ、絶対に逃れられない」

「……」

「お前は優しいから、皆が死ぬのが嫌なんだろ?」

頭を静かに撫でられた
子供扱いされているのはわかっているが、その手を振り払うことはなかった

「オレもさ、できることなら傷ついて欲しくない。でも、オレも人間が嫌いだ、殺したくなるくらい」

背筋が凍るような冷たい声、だが頭に触れる手は酷く暖かかった
人間と変わりはしない

「やってやるさ」

「グリーン?」

その暖かい手をとり自分の方に引っ張れば軽い体は直ぐに腕の中に収まった
驚いて上げたレッドの唇にグリーンのそれを重ねる

「必ず、お前らと俺達が共存できる世界を作ってみせる」


――ありがとう


遠くない未来、二つの種族が笑い合える日が来るのか
諦めていた未来を
グリーンだったら見せてくれる気がした




異種族同士のいざこざですね
緑先輩は人間、赤先輩は……なんだろう
赤サイドには青、金、銀、紅
緑サイドにはその他の所有者

緑サイドは技術が発達していて、赤サイドは人間にはない特殊能力が多々
昔、人間が異種族を乗っ取りその力を利用したり、働かせたりとした
だけどある一瞬で異種族側の逆襲
完全に亀裂が走った二つの種族の恋模様なような話

没になった中二の時に考えた長編ネタ
裏設定には、契約やらなんやらもあるんですよね(笑)
誰か代わりに書いて


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