・秋声監禁/人体実験
・ブラック図書館
・流血/欠損/殺害/残虐表現アリ

秋声に非人道的扱いをしています。
最低最悪のなにもスッキリしない設定なので気を付けてください。











お前はそんな運命なのだ、と言われて誰が納得するだろうか。
枯れ果てた喉はヒューと乾いた音を立てる。その割に顔面は涙と鼻水と涎、汗が滴り落ちている。

「────」
「────」

頭上では作業員が手元の紙を見ながらなにかを話している。耳はもう言葉を捉えようとはしていなかった。きいん、耳鳴りだけが響く。
──嗚呼、耳だけはまだまともだった筈なのに。
壊れた部分を数えて自嘲する。
声を出されるとうるさいからと喉は焼かれた。
噛んで死んでは困るからと舌は事前に切り取られており言葉すら操れない。舌のない口は涎を上手く飲み込むことも出来ずにいつだって口端からこぼれていた。
繋がれた管から輝く蒼い液体が体に流れてくる間、僕は即死しない限り死ぬことはない。それは、僕の怪我を追ったそばから回復してしまうのだ。
──嗚呼、なんて忌々しい!
うとうとと僕は、徳田秋声は目を閉じた。作業が──確認だとかで開腹された腹が綴じられたのだから今日はもう、寝てもよい、筈だ。
僕たち転生文豪は、なにやら侵蝕者とかいう某と戦えと墓から叩き起こされた訳だが、自分は少し境遇が違う。

ここは政府の、転生文豪について研究している施設だ。
より良い強化の為に。
より良い開花の為に。
より良い潜書の為に。
──僕は今日も切り刻まれる。
脚を。腕を。目玉を。頭を。腹を。胸を。与えられたたくさんの薬は時に熱を時に嘔吐を下痢を喀血を。粘膜が焼ける痛みに絶叫しようがお構いなしだ。失禁しようが嘔吐しようが脱糞しようがそりゃあお構いなしだ。手枷足枷のせいで動けもしないし、不愉快極まりない。
どうせ、絶叫だなんて焼かれた喉ではヤカンにも劣るのだけれど。
どうせ僕らは大量生産可能なモルモットだから。
彼らが欲しいのは結果だけ。

僕らが死んだとしても、それもまた結果だから。事切れた僕が、何人も、なんにんも引きずられていく。はいいろの瞳は虚ろに虚空を見つめており、目を閉じて貰えることすらない。
それでも僕は、僕らは、今日も一抜けで死んだどこかの僕が引きずられていくのを羨望の目で見る。
麻酔もない施術で一発で死ねた僕には誰もが称賛を送ったものだよ──弱虫が、と。僕の癖に。ハハ、違うか。僕だから。僕だからそんなのでいい筈なのに。どうして僕はまだ生きているんだろう。
変な薬でも打たれたのだろうか──心当たりがありすぎて分からないや!
恨むぞ先に死んだ僕たちよ!
お前らが死んで生き延びてまた死んだせいでお前らがお前が僕が僕のそう僕のせいで僕はまだ死ねないのだ!
さぁ、誰が一番乗りしてこんな地獄から抜け出せるのか。
死と言う救いを与えられた僕よ、嗚呼──おめでとう!クソッタレ!



ハッと目が覚めた。
ずるずる、と引きずられていく。
顔を上げる。白衣の背中。左側が暗いのは、そういえば昨日抉られた左目が回復しなかったからか。
ガタが来たのか次第に回復をしなくなった体はあまり痛みを感じなくなったものだが、それでも片腕を落とされた時はそのあまりの衝撃に、無い腕を振り上げて暴れたものだ。
まぁ、ないから誰を傷付けることもなかったのだけど。

引きずられているということは、きっと、確かに、僕の心拍は停止して死んだと言うことだろう。
何故生き返ったかは知らないが──一度生き返っているのだかそういうこともあるだろう。うん。

いつもと変わらぬ死体の廃棄に、誰もが意識を向けていない。
──嗚呼、神様!
僕は信じてもいない神に言う。
心の底から、深く、深く。

──なんて素敵な運命を!



僕は僕を引きずる男を蹴り飛ばした。腕を持っていた手が離れて──こんなクソみたいな二度目の生で初めて、自分の足で立ち上がる。
は、と笑った。は、は、は。焼けた喉は吐息ばかりしか溢さないけれど、僕は心の底から腹の底から頭がしびれるほどに大きく笑う。
前の転げた男が驚愕に目を見開いていた。

嗚呼、すまないね。
でも、君がきちんと殺さなかったからいけないんだからね。




あたまをつかむとずしりとおもく、そのままかべにたたきつけた。なんども、なんども、それをくりかえす。たえるだけ。いきたえるまで。
うごかなくなったそれをゆかにおいて、くびをふんだ。そのままこんしんのちからであたまをひくと、きれいに、ぼき、とかんしょくがした。
ちゃんと、ちゃんと殺さないと。
ぼくみたいに生きかえちゃったらこまるからね。
それにしてもくびってひっこぬけないんだなぁ。ざんねんだなぁ。
そうおもっていると、うしろからしょうげき。
ふりむけばほかのはくいのおとこがこちらにけんじゅうをむけている。
でもね、ごめんね。
ぼくにいたみはないから。

さぁ、のこるみぎめがあればだいじょうぶ。
ぼくははしった。そう、はしることもはじめてで、たのしかった。なんどもたまがからだにぶつかったけれど。そんなもの、そんなもの、いまのぼくを殺すには足りない。



とはいっても血を失えば死ぬのだ。
蹴り飛ばした白衣の男から拳銃を取り上げて僕は撃った。反動が片腕しかない僕にはきつかったが、2度、3度と撃つ。
僕は間違えない。間違わず、きちんと殺す。だから、頭に命中したそれに安心した。

「ふ、」

そろそろ死ねそうだ。
痛みはないが撃たれた体のそこかしこからどくどくと血が抜けていく。目の前がきらきら、きらきらと輝く雪が降っていて、とても綺麗だと思った。
嬉しくって吐息で笑う。道連れはふたり。十分だ。

周りを取り囲むクソ研究員に威嚇射撃をする。足元でぼきっとなにかが折れる音がしたけれど。まぁ、それもあとは捨てるだけのゴミだろうし僕が踏み潰しても問題はないだろう。広がるシミが、ぴちゃりと僕の足にからみつく。

伸ばした腕は引き返し。
くわえて上顎へと擦り付ける。
僕は笑う。にっこりと。

──嗚呼、神様!

どうせ遅かれ早かれ死ぬのだから。
こんな幸運に見舞われた僕は喜んでこれを選択する。

──こんなクソッタレな世界をありがとう、死ね!

引き金は軽く、簡単に。
衝撃を感じたのは手か頭か。
わからないままに世界はしっかりとブラックアウト、









した筈だったのに。
僕は再び、意識を取り戻していた。
騒がしい音が──もうずっと前になくした筈のもの。視界は良好。目の前には白衣の男。無機物を見るような硝子の目が、僕を見下ろしている。

「は、はは…」

嘘だろう。そんな。まさか。
僕は恐れ戦く。口からは乾いた笑いが飛び出した。
──そう言えば、僕はこんな声だったのか。
施術台、つまり僕の短い生を繋ぐ断頭台に乗せられて、いつか見た悪夢が繰り返される。
嫌だ、と首を振った。けれど、それは構いやしない。無理矢理口を開かされて流し込まれた液体は痛みを通り越してひたすら熱かった。

「ア゙ア゙ア゙ア゙」

のたうちまわりたくても拘束されていればそれも叶わない。衝動に任せて跳ね、捩った体は手足をただ傷付けるのみ。

「ア゙ア゙、クソ、クソ、が、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

口から溢れるその血と呪詛は、しかし適当な器具で窒息しないように吸われてなくして。
嗚呼、ままならない。
ままならない。
虫の息となった自分に淡々と処置をするそいつを、意識遠退く目で見た。

「───」

どうせ僕らはただの実験動物。
なんて、受け入れるとでも思ったか。

僕は僕の処置の為に近いところにあるそいつの顔へと目掛けて伸び上がる。手足は痛んだが、その痛みより何倍も痛いそれを知っている。
今更なのだ。だから、気にせず。
その口で、その歯で──醜い神様気取りの分厚い面の皮に噛み付いて。
絶叫。いいね。
少しは自分も傷付きなよ。
殺せないことばかりが気掛かりだけど。

その男は恐慌して激昂して僕を何度も何度も殴り付けてきた。前歯が折れる音を聞く。
器具が口から抜けて、折れた歯を飲み込んで。もう。もう十分だ。ごぼごぼごぼと自分から溢れる血液で僕は確かに失血死を目前としている。きらきら、また光の雪が、お迎えか、と。

「───」

失った声で笑う。
何度繰り返そうが僕は一矢を報わずにはいられない。ひとりでなぞ死んでたまるものか。ひとりなぞ。ひとりでも。僕を僕らを踏みつける者へ鉄槌を!
嗚呼、何故僕を作ったんだ──クソッタレ神様め!








20200411

アニ2話視聴前です。
亜人2巻の解剖シーン大好きなんですよね。
徳田が監禁状態みたいな話をちらと目にしたので人体実験監禁ネタを突貫で書きました。楽しみです。


以下設定語り。

このループ徳田は、処理された死体から取り出された小魂=精神の情報を保持したもの、を再利用時にきちんと初期化されず2周目が発生してしまったルートです。
多分また再利用されます。歪んだ魂が更に殺人・自殺を経てより強固になったのできっとこの小魂を使われた徳田は最初から気が狂っています。殺人衝動の塊です。
もしもこれが一般の図書館で使われることがあったらそこは血の海になったことでしょう。
(今回の想定の別エンドがこれでした)
司書だろうが友だろうが彼にはわかりません。目の前にある人を全部殺せるだけ殺して、自分をも殺します。生きていたくないので。あんな想いをもうしたくないので。精神振り切れてますね。

「嘘だ嘘だどうしてまたなんて、またなんかいらないんだ、死ね死ねシネもう痛いのは嫌なんだ…ッ!」

でもあれですね。
徳田を失った図書館が必死こいて再び転生に漕ぎ着けた徳田がこんなバーサーカーで恐慌しながら司書や仲間を殺戮するのを目の当たりにした花袋や川端、紅葉先生たちが徳田を殺すという展開ムネアツですね………。
所詮レベル1なので簡単に死んでくれます。
死にながらようやくそこで目の前の泣きそうな顔が知己のものであると気付く、なんて最高に救われなくていいですよね。そこに転がる肉塊はお前の友だよ。お前が殺したお前の友だよ。やっちゃったね!

「はは、僕、友達殺しちゃったの…?」
「ねぇ、花袋。僕を殺してくれ。お願いだ。頼むから。僕は生きたくない。もう生きていたくない。こんな状態で……生きてなんかいられない!」

みたいな感じで花袋くんに弓で貫いてほしいですね。恋人を射ち堕とした日。恋人じゃないね友人だね。
鳥秋好きとしては白鳥がやってくれたら万々歳だけどもっと分かりやすく苦悶してほしいんだ、花袋の苦悶の顔は最高だろう可愛いね。

脱線。
研究所に戻ります。

本来ならば初期化されなにも知らない徳田が出来ます。
この研究所は内容の通りに文豪の生態を調べる為の非人道的行為を繰り返す政府裏組織です。
基本的に私の思い描く図書館システムでは補修に洋墨を精製したものと小魂などを配合したものを点滴ないし注射で接種しています。
場合により日頃から薬としても取り込んでいます(人体の保持の為)。

そのよりよい配合を調べる為に徳田を使い捨ててます。
徳田で試した薬は、彼と同じく何故か安定供給される初期文豪4人に一定試されてから現場入りをします。人体損壊度が高いのは徳田ですが他の4人もそれぞれにえぐい目にあっています。可哀想。

内容では修復が出来なくなる描写がありますが、それは過剰投与などの副作用・潜書世界ではない・再生率を調べる為に過度の欠損などが繰り返されている為です。耐久度も測られている訳ですね。
多分補修必要分より過剰に洋墨を注ぎ込まれた徳田が自壊することとかあったのかなと思うと怖いね。

ある程度の貢献もしくはある程度の秋声による暴虐が認められたら研究所は解散となります。
多分この時に呪いの徳田小魂が流出したんですね怖い。

以上です。
ありがとうございました。



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