霊感持ち自然弓のコピペ改変小話




【尾崎一門】

「そういえば。最近の幽霊は白いワンピースが定番だとか」
「なに?男もか!?」
「いえ。ただ、幽霊ネタは女性が多いので。男性は戦時の軍服だとか」

紅葉と尾崎はそう話していたのは談話室の一角だ。茶菓子を摘まみながら会話するふたりの横で、ぐらぐら、うつらうつらと秋声が船を漕いでいた。
図書館最強として君臨するこの(弟)弟子は日々いろんな仕事を任されており疲れているのだろう。たまにしか出来ないこの一門の時間を睡眠に費やされるのは鏡花にしてみれば頂けないことであったが、師が良いと言うならば飲み込むまでだ。
小柄な秋声であるから、完全に寝落ちたら運んでやろうと紅葉は意気込んでいる。確かに紅葉や鏡花は秋声よりかは背が高いが細身なので不安はあるが、ふたりがかりならば問題なかろう。起き出して恐縮する秋声をからかいつつ、談話を興じれたら良いなと言う願望もある。

「しかし何故白いワンピースなのか。昔も死装束であったりしたな」
「そうですね。他にも白髪の老婆やおかっぱの少女や──一方で、豪華絢爛な召し物だったりすることはありますね」

そんな、なんてことない話をしていた時だった。
かくん、と傾いだ頭がバランスを取って跳ね上がる。ぱちくり、と瞬いた秋声はぐるりと見渡して紅葉と鏡花を見やった。
寝ぼけているのだろうか。ぼやっとしている秋声に小言と茶をくれてやろうかと鏡花が動いたその時だった。

「白いワンピースはねぇ」

いきなり何を言い出すのだろうか。そう思ったのは一瞬で、先までの自分たちの会話の内容だと気が付いた。
寝ながらでも耳には入っていたのだろう。半分睡眠の半覚醒状態だとたまにある。

「あれはねぇ、初期装備しかない無課金アバターだよぉ」

「むかきんあばたー」
「しょきそうび」

思わず紅葉と鏡花は秋声の言葉を繰り返す。
司書がハマっているらしいアプリゲームは聞き及んでいる。紅葉たちは興味がない故にやっていないが、仕組みについては教えてもらい実物もみたことがあったからそれがなにか分かった。
分かったが──だからこそ、心に冷たく寂しい風が吹く。

「いい服着てるやつは、頑張ってレベルを上げたんだろうねぇ」

「がんばって」
「れべるをあげた」

もうふたりには鸚鵡返ししか出来ない。
話ながら眠気が褪めていないのか、秋声の目はしょぼしょぼと細められており、ぽやぽやと気の抜けた声はいつ寝息に変わるか分からない。

「それか、重課金でもしたんだろうねぇ。死んでも大変だねぇ」

なにが楽しいのか緩い笑みを浮かべる秋声をしょっぱい気持ちで見守って。
死んで叩き起こされ戦わされている自分たちが言うと、心臓にブーメランが突き刺さる心地であるが、確かにそうだ。
紅葉と鏡花のふたりの脳裏に閃くキャッチコピー──「今日からあなたも幽霊に☆ レベルを上げて最高のコーディネートで怨霊になろう!」──やだなぁ。

「ゆ、夢も希望もない…」

そんな死後を思い描いて、思わずそうぼやいても仕方がないだろう。ふたりの心は合致した。
しばらくそうやって呆然としていたふたりは、いつの間にかしっかりと寝入り始めた(弟)弟子を見ながらどちらとともなく頷いた。
初期装備がしっかりしていてよかった──ではなく。
今の話はなかったことにしよう、と。

すうすう、健やかな寝息を聞きながら記憶を改竄するのであった。



【花袋と秋声】

「この間さ」
「うん」
「金縛りにあったんだよ」

そう言った花袋を秋声は驚いて見た。
結界の定期検査はしている筈なのに!もしや自分のミスだろうか。
不安気な秋声に花袋は「ちがうちがう」と笑って見せた。

「結界は機能してるさ。いい感じに自動で霊道を流しているよ。それに俺の結界は害意あるものは寄せ付けないからさ」
「そっか」
「そうそう」

なんだかんだと花袋は秋声の師である。実力は知っているが、対するものが怖いものなので心配や用心することに越したことはない。
ありがとな、と軽い調子の花袋を見て秋声は笑って応えた。

「でさ、金縛りにあったんだよ」
「うん」
「何事かと目を向けてみればそこには霊が4人くらいいて」
「うん」

不安がる展開がないと明言されているので秋声は安心して先を促す。

「すげー上手いゴスペル歌ってもらったよ」
「ゴスペル」
「うん」

秋声は目をぱちくりさせた。

「へへ。お礼だったらさ。嬉しいよな!」

自分たちがやっていることは同業者以外には認知されない。
誰かを救っても、なにかを潰しても、感謝をされることはないし、ともすれば忌避される、悲しい仕事だ。
だが、自分たちの働きで救われた心がある──それを知れると、こんな力でも持っていて嬉しいと思える。
そんな嬉しそうな親友を見て、秋声は一際柔らかく微笑んだ。

「よかったね」
「おう!」



【志賀と太宰と織田】

「この間、志賀から自転車を借りたんだ」
「なして???」

素で織田は問い返した。
話している太宰とその自転車の持ち主、志賀は太宰が食って掛かる為にいつだって火花が散っていたのに。主に一方的に。
何故、そういう相手に借りるのだこの男は。

「まぁまぁ。それで、街に降りる近道のトンネルあるじゃん?」
「あの獣道の?自転車で行くんは大変やない?パンクしたりせんかった?」
「どうせパンクしても俺のじゃないし」
「太宰クンったらもう!!!」

それこそ太宰である。
街へ降りる道は正規の整備された道があるのだが、ぐるり、緩やかな傾斜の山道で距離としたら少し遠回りだ。
近道は最早獣道で、昔に使われていただろう10メートルくらいの古いトンネルがあり、傾斜がきついがその分ほぼ一直線で危険を省みなければ確かに近道と言えるだろう。

「それでさぁ」

太宰は織田のツッコミには気を払わずそのまま話を進めるので、仕方がなく、織田も続きを拝聴する。

「急いでたから近道使ったんだけど。なんかさ、通ってる間に自転車の後ろが重くなってくんのよ」
「へ?」
「振り向いたら荷台に黒い靄があんの。確かに暗いトンネルだけど…あ、すごい乗っかられてる!ってその時分かったんだ。それで、止まったらやばいなって思って走り抜けた」
「ッッッよかったー!ほんまよかったー!怖!!!」

あっさりと語られる恐怖体験に織田は思わず悲喜交々の声を上げた。
本当に無事でよかった。
そしてそんな話は聞きたくなかった──絶対にあの近道は使わないって誓う。

「でさ。自転車そのまま返して」
「なして???」

本日二度目の心からの疑問であった。

「なしてそんなことができるん!?鬼の所業やん!!!」
「だって志賀のだし」
「鬼!!!」
「でさ。志賀に“なんか後輪が重いんだがお前なんかしたか?”ってこの前聞かれて」
「アアア…!」

完全に取り憑いている。

「“俺はなんもしてない!そりゃ、普段態度は悪いけど借りたもんはちゃんと返すさ!”って言ったら“疑って悪い”って謝られた」
「確かに太宰クン“は”なんもしてないかも知れへんけど!!!!!!!!鬼!!!!!!!!」
「さっきから元気だな。喉大丈夫か?」
「誰のせいやと思っとんのや!!!???」

先程から声をあらげてしまっていた為心配されたが、今されるべきは自分ではないだろう。性懲りもなく「それでさ」と太宰は続けた。

「この前見たら後輪の靄が増えていたんだけど、アイツあの近道使ったんかな」
「知らんがな!!!!!!」

知らぬが仏と言う言葉もあるが。
流石にこれは忠告するべきかと悩む織田であった。


(後日、織田→徳田で話を聞き祓った)



【広津と花袋と独歩】

「この前広津が“元カノと会うと気まずいですよね”って話しかけられてさ」
「っ…、うん」

出だしから独歩は噴き出しそうになるのを必死に耐えた。

「俺、“元カノいないからわかんない”って答えたんだ」
「ンッ………、うん」
「そしたらな」

ゲンドウポーズを取って話していた花袋は、ワッと顔を両手で覆って嘆いて見せた。

「“すごい!今カノと何年付き合ってるんですか”──だって!」
「ンッ!フフッ!」
「恋愛脳怖いよー!どうせ!どうせは俺は………!」
「フ、フハ、……あー、はいはい。そうだな。ふ、ふ、つらかったな。そら、今日はいっぱい飲みな?奢ってやるからさフハッ」
「独歩〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

今日も親友が面白い。
そうして夜は更けていくのであった。



【藤村と芥川】

「芥川。君、昨日部屋に河童の頭は生えていなかったかい?」
「は?」

朝食の席にピリリと緊張が走った。

「……河童好きを公言してはいるけど、貴方にからかわれるネタにされる筋合いはないです」
「こら、龍!」
「……いや、見てないんならいいんだ」

そう言ってすっと離れていく藤村を不可解な顔で芥川は見送った。
ぽつり、藤村の呟いた言葉は誰に届くことはなく。

「昨日、僕の部屋の天井に河童の下半身が生えていたから、上の階の芥川の部屋に頭があると思ったのになぁ」



【独歩と秋声】

「秋声…お前、最近なにか変なの見たか?」
「へ?」

急な質問に秋声は戸惑った。

「その調子じゃ気付いていないのか。なにか常ならないものの気配があるぞ。分からないか?何かに“魅入られ”たのが」
「待って?魅入られるって何?ちゃんと貰った結界符は毎日ちゃんと持っているけど──」

慌てた秋声に独歩は憐れむような表情をしてゆるく首を振る。

「ただの幽霊じゃない。
“魅入る”の“魅”の字は分かるか?“未だ鬼ではない”って書くだろ。霊より少し上の、妖怪のなりかけみたいなのに入られたんだ」
「妖怪…」
「それが御霊か怨霊、どちらに転ぶかはわからない。だから──まぁ、日頃の行い気を付けてってな!」

その忠告は、なんだかんだ幽霊に慣れてきていた秋声にはとても怖いものに思えた。不安気な顔を見て、独歩は安心させようとしてかポンポンと秋声の肩を叩く。

「大丈夫だよ。無駄な殺生とかしたりして穢れを溜めたりしない限り、秋声の霊力は澄んでいるから。そのままならそれを糧にするソレは濁りはしない」
「あっ、魅入られるってそんなにガッツリ取り憑かれてるんだ???」
「そりゃあな。お前に寄生して力を溜めようとしているのさ」

澄んだ霊力は御霊へ。
穢れた霊力は怨霊へ。

「寄生…」
「でもまぁ、秋声の霊力は強いから少しくらい食べられても体調とかに不調は来さないだろう。
符が守っている分、力がある程度なければ取り憑けない。が、逆にそれだけ力があれば容易に祓うことも出来なくてな。まぁ御霊となれば守護霊に、怨霊となれば調伏して使役すればいいさ」

よかったな、式は初めてだろう。
そう笑った独歩を見ながら、やっぱり彼も枠外の人間なんだなと思った。

「ところで侵蝕者を倒すのは穢れに繋がらないかな」
「む。どうだろうな。でも、お前の式で結果は分かるさ。楽しみだな」



ポケットモンスター 御霊/怨霊

御霊→守備力UP
ランダムスキル:天罰・攻撃無効・回復
怨霊→攻撃力UP・遠隔攻撃可
ランダムスキル:呪い付与・狂化憑依

霊力を与えて好みの式を作ろう☆
〜そしてシャーマンファイトへ〜



【↑秋声その後】

「約束の時間の10分前くらいになると背中をつついて教えてくれるんだ」
「便利」
「あと階段から足滑らせた時、着地させてくれたよ」
「めっちゃいい子じゃん!」
「でも忙しくてお礼をしばらく出来なかった時は助けてくれなかったな」

確かに神は祀れば報い、廃れば祟るといった存在だ。上手く共存できているようで安心した。

「ちなみにお礼ってなに?」
「好物はフライドポテトとコーラ」
「ジャンキー!」
「ポテチも好きだよ」
「うーん。すっかり餌付けされてるな」



【芥川と藤村と秋声】

「芥川って零感なのにホイホイじゃない?」
「…そうだけど。どうしたの?」

不意に藤村が話し出したので、秋声は書き物の手を止めた。

「この前、出先で市松人形を買ってきたんだって」
「市松人形……なんてベタな」

人形は思念が溜まりやすく、現実でも創作でも悪霊を宿らせる定番アイテムである。

「ね。それで、髪が伸びるらしいんだ」
「へえ、定番だね。っていうかなんで知ってるの?」
「この前、食堂で話していたのを聞いただけだよ」
「また聞き耳を立てていたんだね…」

多分相手は菊池か谷崎、犀星あたりだろうか。
彼らも毎度大変だ。芥川は零感でホイホイだが、霊障を受けない。その為、被害が周囲に散ったり、彼が恐怖していないが故の恐怖体験を楽しげに聞かされる羽目になる。

「それでね。段々と腰まで伸びていく髪に、つい言ったんだって──“もう少し短い方が似合うよって”」
「ヒエッ」

秋声は息を飲んだ。

「すると翌日は伸びず、日が経つにつれてするする、するすると髪の毛の長さが戻っていく。そして肩より少し下くらいになって“うん、それくらいなら軽やかで可愛いよ”と」
「うわーーーー!」

両腕を自身を抱いて秋声は震えた。

「なんてことだよ!そんな…そんな…顔がいい男しか言ってはいけないセリフだね…!」
「ただしイケメンに限るってね」
「確かにあの顔で言われたらひとたまりもないよ!いやぁ、怖い話を聞いてしまった!」

幽霊よりも人間の方が怖いというのは往々にして霊能者あるあるである。そして怖いの方向性は様々だ。

「そして、その彼女がこちら」

ドン!と藤村が取り出したのは市松人形であった。
聞けば、流石に芥川の近くに置いておくのは不安だった菊池が無理に芥川から貰い受けたらしい。
大体、谷崎や犀星は芥川に害がなさそうであればさして取り合わない為、苦労するのは菊池である。

「困っていたようだから引き取ったんだ」
「まぁ、そりゃ困るよね。あ、本当に肩下で止まってる」

秋声は確認して頷いた。

「ね、秋声。彼女に髪飾りのひとつでも作ってあげられないかな」
「ああ、うん。そうだね。折角、似合うと言ってもらえたのだものね。綺麗にして送ってあげたいね」

後日。
つまみ細工の綺麗な髪飾りで結い上げられた市松人形は、ひっそりと、でも穏やかに焚き上げられたのであった。







20200213

定期的にホラーぽいのが見たくなるんだけどホラー書く才能がない。
コピペで検索したりなんか記憶にある話だったり。結構改変しまくってる。
たがわ先生がなんかいっぱい出てしまった。イケメン怖い。

式の話は本当は独歩ではなく藤村だったんだけど独歩の出番が無さすぎたので交換。
神聖なナニカが憑いてる秋声さんも小鬼使役している秋声さんもどちらも捨てがたいし秋声さんの力で育った実質こどもじゃないですか。絶対可愛い(欲目)
他三人もなんかしら持ってそうだなぁ〜〜〜〜多分秋声さんの子がしっかり形作られて「見て見て!」ってした時、初めてのご紹介いただいた先輩方がマジ伝説のポケモンで、たまごから孵ったチビ共々ヒエエエッてなる秋声さん。

以上ですありがとうございました



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