三、お疲れオダサクと徳田最凶伝説




ふとそれに気付いた秋声は、眉間のシワを倍に、凶悪的なまでに鋭く細めた目で顕現当初からの相方を睨み付けた。

「オダサクくん」
「ん?ハァイ、なんでっしゃろ秋声サン?」

穏やかな顔で振り返る彼は、午前一番の潜書組への指示を出していたところであった。いつも通りのジャケットに、いつも通りの長いみつあみ。ひとなつっこい笑顔。
少し遅れてやってきた秋声以外にそれに気付いた者がいないようだ。無頼の残りの二羽がいないのだから仕方がないと思わなくもないが。

「君、自覚はしているかい?」
「………なにが、ですやろ」
「しらばっくれても無駄だよ」

どこか不穏に移る秋声と織田の会話に、集まっていた2会派はざわりと不安げにざわめいた。それに「大丈夫、君たちに問題がある訳ではないから」と言いながら、それぞれが今日使う召装の準備をする。
それは基本的にどの武器にはそれ、みたいな公式があるものの会派の練度や安定感、その日挑戦する本の難易度により細かく決めるのが常だ。その管理を任されている秋声は各々と軽く相談しながら合ったものを決めていく。

「遅れましたすみませぇん…」
「また遅刻かい。いや、司書さん。悪いけど堀くんか中野くんを呼んでもらえるかな?」
「えっ?」

そろりと申し訳なさそうに入ってきた司書に溜め息を吐きながら秋声はそう申し付けた。下手に出ているようで有無を言わせない言葉に秋声の気持ちが如実に出ている。

「今日は織田くんを休ませる。から、交代要員だよ」
「エッ」
「エッ」

今度は織田と司書が声を上げた。勿論潜書予定で集まっている面子も目を丸くしている。

「ちょ、なに勝手に決めてはるんです秋声サン!?」
「勝手にじゃないさ。言っただろう、しらばっくれても無駄だよと」
「……や、意味わからんですわ」
「フン、濃い目の化粧ならバレないと思ったかい?僕の目は誤魔化せないからね。僕ら、いつから一緒だと思っているんだい」

うろつく織田の目に舐められたものだと言いながら秋声は彼との距離を詰めた。そうだこの図書館に顕現したトップ2は即ちそこからずっと一緒なのだ。
他の目があるままにその前で躊躇わず秋声は織田の頬を片手で掴んで引き下ろす。

「アイテテテ」
「…ほらクマだ。君、どうせ執筆に乗って寝てないのだろう?前にも言ったよね。他の人の迷惑になるから、そういう時は申告して誰かに変わって貰いなさい、と」

ごしごしと無理矢理に拭われた化粧の下にうすらと現れたクマ。気付かなかったと皆が瞠目する中、織田は「せやってぇ」と情けなく言う。

「たかが一晩の徹夜なんぞ屁でもないですしぃ?ワシの突然のワガママで急に交代になったりしたら、そっちの方が迷惑ですやん?」
「ふうん、一徹だけと言えば許して貰えると思ってる?」
「ヒエッ」

一段低くなった秋声の声に織田は小さく肩を跳ねさせた。

「この分だと三日はろくに寝ていないのではないの?余程調子がいいのか分からないけれど、調子に乗るのはいい加減にして寝なさい!」
「ピャッ」

ピシャリと叱りつけられた織田──と一緒に司書もまた背筋をピッと正した。

「正常な判断が出来ない人が指示出す側にいる方が迷惑なんだよ。さぁ織田くん。自分で寝るか、僕に寝かしつけられるか選びなよ」
「でも、」
「デモデモダッテは聞かないよ。問答無用!」

一瞬身を低くした秋声がなにをするか見当がついた者も、止められた者も、いなかった。彼はすぐ前の織田の懐に──みぞおちに、正確に拳を叩き込んで見せたのだ。ドッ、と重たい音がする。

「そ、れは、寝かしつける、とは、ちゃい、まっ…か…」
「フン、手っ取り早いだろう?」

秋声の肩にもたれかかった織田の苦言に秋声は得意気に笑って見せる。勿論織田も司書もその他の面子も「そうかなぁ?」と内心で首を傾げた。うちの最高レベルが恐ろしくて口には出せないけれど。
そして意識をなくした織田を秋声はひょいと肩に担ぎ上げた。身長差もあり、織田の足の位置がとんでもなく低いのが笑えるが今の空気は笑ってはいけない図書館24時。

「…ああ、皆。時間を取らせて悪かったね。司書さん、もう準備は終わっているから直ぐに潜書は出来るよ。ちゃんと代理を呼び出しておいてね。僕は織田くんをふとんにいれてくるから──じゃあ」

てきぱきと言うだけ言って秋声は部屋から出ていってしまった。織田のみつあみが床につかないように片手はみつあみを救出しつつ、片腕一本で織田を抱き上げた状態で。
ちっさくても力持ち。うちの最強は伊達じゃないんだぞう!そう思った司書だったが残りの面子の頭には最強ならぬ最凶としてインプットされた事件であった。






180104

織田くん寝かしつけ2本目はネタが練りきれなかったのでまた機会があれば。
二の話がご都合主義かつ一番時間かかって面倒だった。でも安吾に秋声のケツポンさせられて満足です。
秋声ちっせぇよぉ可愛いよぉ



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