女体化文豪の小話集にするつもりが女体化自然弓の話だけになった。ので、書き出しと終わりの雰囲気が違く感じるかも。
女体化自然弓についてはイラストまとめの最後の方にある設定絵を参照いただくとわかりやすいかも知れません
ギャルゲー主人公ポジション:花袋くん















なんと不思議な因果だろうか。
皆が一様に割り増しで顔が良く生まれ直しただけでなく、この図書館に転生した一部の文豪が生前と同じ性別にはならなかったのだ。
堀や泉や谷崎など明らかに女性的な容姿なのに逸物がぶら下がったりしたままの者もいるが。






尾崎紅葉、泉鏡花。
この師弟はそれはそれは美しく生まれ直してきた。明るい色の髪に小作りの顔。長いまつげが縁取る切れ長の瞳は涼やかで、細身を包む着物がまたその凛とした雰囲気に似合っていた。
しかし男である。
生えているのである。
そんな彼らにはもう一人、弟子がいる。
──徳田秋声。
彼が、否、彼女がこの度に性転換をして生まれてしまった可哀想な者のひとりであった。
彼女は地味だと自認するように、師や兄弟子のような華やかさは兼ね揃えていなかった。150センチ程しかない彼女には師たちの顔は20センチも上にある。黒髪は艶やかだが短い所為で所々はねており、小さい鼻すら背が低い。
身長が低い所為もあるがそれでも成人基準には達していないだろう幼い顔立ちの中、不満に寄せられたムッと突き出す唇は化粧を施していないが淡くも鮮やかに色付いている。
下世話であるがそんな幼い容姿に不釣り合いなほどに胸は大きく、歩く度にたぷたぷと揺れる胸元は無意識に男の視線を引いて止まない。
脚絆や腰巻きといった装飾は変わらないが、ただ、袴だけが超ミニとなっており、もしも腰巻きの着物がなければ下着が丸出しではないかというセクハラ仕様となっているが、しかしそれもまたバグによるものなので補修をした際にどうカスタマイズしたとしてもまた超ミニに戻る為、最近では彼女も諦めた。
しかし知らぬは本人ばかり。
普段はサイハイ丈の脚絆から上の素足が超ミニの袴からちらりと見えるそのむちっとした太股に、罪悪感を覚える男がいることを──。
性質として意固地で不思議。弊館最古として責任を感じているのかいつだってぷりぷり怒っているように思えるが、本来の男として転生した彼とてそう変わらないと話は聞く。
変わらない、が、そんな彼が彼女となり、大きく変わった点がある。


眉間にシワを寄せて唇を噛む。
まつげに滴を乗せてはいても溢しはせず、俯きもせず。じいと睨み付けつつ震える肩の薄さに、にらまれた方はウッと身を固まらせた。
些細な口喧嘩であった。
いつもの、と言える師への態度への鏡花の苦言だ。
うるさいなぁと鼻白む秋声とまた二三の言い合いをする、そんなパターンが分かっているから周りは「またか」と苦笑するのだ。
少しの言い合いの後、秋声は泣き出す。それがお決まりのパターンであった。
涙を目に溜め、頬を膨らませ。物言わずに睨み付けるのはそこまでしてもまだ涙を溢さないように意地を張っているから。

「なっなにを泣いているのです!」

もうパターンを理解しろと周りは思っているが、そうしてようやく鏡花は慌てだすのだ。しかし秋声は答えない。答えようと口を開いたら最後、ギリギリに保っていた涙を溢す羽目になるのが分かりきっているからだ。
そうしてぶるぶるしている秋声に触れるか触れないかのところで手をこまねいている鏡花がまた何事かを言って──ぼろり、秋声が涙を溢す。
息を飲む鏡花を前に、秋声は言った。

「〜〜きょうかなんて、だいっきらいだっ!」

本人としては叫ぶほどの心持ちであったのかも知れないが、揺れる声はまさに小動物。絵に描いたようにガーンとショックを受ける鏡花は目を見開いて弟──否、妹弟子を見下ろした。
垂れ始めた鼻水をズズッとすすり、ごしごしと乱暴に目元をこする。
もしも自分に原因がなければ鏡花とて秋声にハンカチで気遣う気概はあったのだが。睨み付けられている状態ですることは出来ず。

「鏡花のバーカ!」

語彙力が身長に応じた秋声のなけなしの捨て台詞を聞いてもなお、鏡花はしばらくその場に立ち尽くすのであった。

(この後、堀や中島が鏡花を回収し、慰めてくれたのもまたひとつのルーティンである)





「で?また逃げてきたのか」
「……逃げてない」
「はいはい、わかったから爪を立てるなよ」

秋声が逃げ込む先は、いつも花袋であった。
たまに潜書などでいないと織田や菊池や佐藤など面倒見が良かったり仲が良い面子が引き受けるが、彼らもいなければひっそりと自室に引きこもろうとするのを周りがあれやこれやと引き留めるのが通例だ。
ちなみにちやほやしたくて秋声避難面子をまとめてなりひとりは必ず、潜書にぶちこむこともあるということを追記しておこう。

さて今日はきちんと花袋がいてくれたので、あの無防備な背中にぎゅうと抱き着いている。背中でスンスンと泣く秋声に逃避を尋ねれば、肯定したくない彼女から脇腹を捻られ、痛みと共に天を仰ぐ。よしよしと小さな手を撫でて宥めながら息を吐いた。


(んんー。胸がなー当たってるんだよなー……)

正直嬉しくはあるが、相手が問題である。友人であり、手のかかる弟のような人物がまさか女になってしまって、そこに芽生えたのは色恋などではなく庇護欲だった。
体は正直なので押し付けられる胸の弾力にときめきはするものの、おかずにはし得ない癖に不意に思い出して罪悪感を得るのをどうにかしたいものだが。

「秋声、そいつ絶対不埒なこと考えてるから独歩さんとこに来いよ」
「僕でもいいよ」

虚無っている花袋をよそに独歩と藤村が声をかける。

「……君たちは、セクハラをするじゃないか」

じとっと花袋の腰から腫れた目を覗かせて秋声は言う。それに返るのはまた軽い声。

「いーじゃん。今は数少ない同類だぜ?」
「そうだよ。女同士だから、セクハラじゃないよ」

口々にそう言ったふたりに、花袋と秋声は声を揃えて「セクハラだよ!」と怒鳴り付けた。
──そう。独歩と藤村は、秋声以外にこの図書館に数名いる女体化文豪であった。
そして、独歩は秋声ほどではないがそれなりに大きめな胸とメリハリのある体つきをしたお色気お姉さんに成り果てていた。そのバランスの良いボディラインを見せ付けるが如きスーツのジャケットは丈が短く、スカートはタイトミニで際どい。薄い黒のストッキングはどこの性癖のバーゲンセールと言えるだろう。
本人曰く「これが戦闘服とは有り得ねぇ」ではあるが。
藤村は逆にスレンダーで薄幸そうな美少女へと変わっていた。男の時と変わるのはズボンがプリーツのミニスカートになっていることくらいだろう。サイハイブーツとの絶対領域が眩しい。
男と変わらぬ外套が、また更にそのユニセックス感を醸し出しているが、不意に覗く首や手足の細さに少女らしさは隠しきれない。
どちらも背は花袋と然程変わらず、秋声と合わせて種類の違う美女美少女の三種盛りといった感じだ。

「やだよ。君たち胸揉むじゃないか。それも服の中に手を突っ込んでさ」
「生じゃなければいいの?」
「生じゃなくても嫌だって言っているんだよっ!」

自分を挟んでわちゃわちゃし始めた美少女たちに花袋は口を閉ざす。性差関係なしに自分が彼らに口で勝てるとは思わないのだ。
そして警戒を顕に花袋の腕を乳に埋めていることに気を払わない秋声の所業を素数を数えることで気を紛らわすことに没頭する。
と、逆の腕を独歩が取った。

「まぁ、揉むのは後にしてさ」

にっこりと微笑むと秋声と同じく花袋の腕に胸を押し付ける。横で秋声が「させないよ!?」と言ったのはスルーされた。

「秋声、また泣いたのか。目が腫れてるぞ」
「うっ。僕だって泣きたくて泣いている訳じゃないんだ。でも、なんだか涙がこらえられなくて」
「うんうん。わかるわかる。なんか、女になってこう……感じ方がな」
「そうだね…響き方が違うというか…感情が涙腺直通というか…」
「いちいち泣きたくなんかないのにな。昔は、いちいち泣く女なんて面倒だと思ったが」

なんて元男たちが口々に言う。泣きたくて泣いている訳ではないのだ。泣けばどうにかなると思って泣いている訳ではないのだ。
本当に。
話題を変えて話したことで落ち着いたのか、スンスンと鼻を鳴らしていた秋声も落ち着いて、ゆるく花袋の腕に絡まるばかりだ。大きいので押し当てられていることに代わりはないが。

「じゃ、今日は秋声の部屋で壁新聞の打ち合わせでもするか」
「おっいいな!最近、近くのカフェで新しい子入ったらしくてさー!」

独歩が変えた話題にこれ幸いと花袋は飛び付いた。花が飛ぶほど嬉しそうな顔で美少女たちに囲まれながら遠くの少女に想いを馳せる様には笑いを禁じ得ない。彼にとっては美少女なれど友人は友人という枠から飛び出すものではないらしい。
だがしかし。

「じゃあ打ち合わせして午後、皆でそのカフェに取材しに行くか」

独歩の音頭に誰もが頷いた。
そしてそれは違うことなく実行される。

田山花袋は気付かない。
彼は友人♂とカフェに来ているだけのつもりだろうが。
ついでに徳田秋声♀も気付かない。
中身は違えど端から見れば女3人侍らせた男が、ナンパに成功する筈がないと。
国木田独歩は知っている。
だからこそ、こうして皆で行くことを提案しているのだ。
そして島崎藤村は含み笑う。
今回もまんまと成功してしまった。

独歩と藤村は視線を交わすと小さく肩を竦めた。いつになったらこのダメ男たちは気付くのだろうか、と。










20200106

ギャルゲーは始まらないけど逆レ4Pなエロゲ展開は始まる予定です。

独歩と藤村は別に阻んでいる訳じゃないけど、ナンパひとりで行けない〜一緒に行こうぜ〜!な花袋に「それがいけないんだよ」と思いながらいつ気付くのかを楽しみにしているだけ。
秋声はそこまで頭が回ってないのと興味がないだけ。
白鳥さんも気付いてるけど言わないだけ。

泡鳴が来たら真顔で突っ込まれてそこでようやく花秋が「アッ!」てなるやつ。


どう考えてもハーレムですありがとうございます。



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