・コピペ改変
・普段の話では会員制非公開型図書館ですが今回は一般利用者のいる図書館になっております。
・独自図書館設定盛り沢山






文豪たちはいい年齢の大人の集団ではあるが文豪が故に自由人が多い。そんな彼らを昼食後の食堂に集めて館長は言った。

「あー、今日わざわざ集まってもらったのはな。実は警察から、この付近に銃を持った不審者がいるとの情報が入ったからだ」

言って、視線がバッと集まったのは吉井であった。彼は新参でまだ認知は薄く、やや高めな年齢、銃使いで酒癖が悪いときたものだ。
彼ら文豪が使う武器は現実世界でも本から形態を変えるものが出来るが、威力を十分に発揮できるのは本の中だけであり、言わば精巧な偽物を所持する不審者に間違いはない。
えっ俺!?と慌てる吉井を横目に「違う違う」と館長は苦笑した。

「流石にうちの連中の話じゃないさ。この中に、街で拳銃を突き付けて強盗とかした奴はいないだろう?……いないよな?大丈夫だよな?」
「アッハイ大丈夫です続けて続けて」

苦笑から一変して不安な顔をした館長を織田が落ち着かせる。館長の不安は尤もなところはあるが皆一律に社会的地位を持っていたこと、最低限の社会的生活が守られていることであえて犯罪を犯す理由もない。それに、なんだかんだ司書の名義で株投資に成功している某社長もいるおかげで資金繰りは順調であり、チョロイその人は造作のよい顔に弱いので、あとギャンブルにも弱いので、皆のよい金づ、いや、なんだ。そう、皆の懐事情は悪くはないのだ。
ちなみにで言うが、文豪たちは週に3日ほどの潜書作業の他に一般図書員として2日ほどの労働をして、2日の休日を得るサイクルを含めての給金が支給されているという訳だ。
その図書員としては外見年齢からして新美たちは免除されてはいるが代わりに日々館内のパトロールとして迷子の子供を案内したり時にはカウンセリングの真似事などしていたりする。そう、あの外見であの性格でも彼らは立派な大人であるのだから。
そして酒癖の悪さや労働に適していないとされる面子は館内図書や利用時間外の清掃や美化活動をしている。存外にやることは多いし、正直な話、転生文豪の人数も大分増えてきたので全員が表の作業をしようとするには人数が多すぎるのだ。そして、菊池をコロコロする程度に顔の良い人物が多く居すぎるということはつまり彼以外にも支障が出る──そう、図書員アイドル騒動は早々に忘れられることではない。特に顔面の造作が良く愛想も良いという面子はこぞって問題回避の為に美化活動要員として移動された。
あとは調理など一般生活に必要なスキルを持つ志賀や露伴たちもまた家事要員として免除である。人数が人数なだけあって毎食と言う訳ではないが。
武者小路や室生など趣味の中庭菜園組はその美化活動の一貫として、また、夏休みの自由研究資料としての立案・栽培なども頼まれている為に図書員作業はなしだ。お百姓さんに休みなどない。
そして万年助手にも休みはない。なので織田と徳田の最古参組も図書員作業はしていない。
ちなみに月に一度の有志の演奏会は石川の大事な収入源である。
閑話休題。

「死者は出ていないが実際に発砲された者もいると聞く」

怪我の割合などは知らないが確かに死者はいずとも負傷者はいるらしい。威嚇射撃に驚いて自爆といったものだが、強盗なのだから手荒さはあることだろうがけれど簡単に人を殺す程には堕ちていないのただろう。
ただ、怪我人がいることにより捜査や用心が厳しくなっているのが現状で、相手が追い詰められてしまっていればなにが起こるかは分からない。
ここの図書館は出入りの人数が多く、また敷地近くに小さい公園や駐車場もあるし図書館本棟以外にも職員棟(文豪たちが利用するもので一般職員の使用するものではない。彼らは通いである)も有しているのでそれなりに広く、それなりに死角も多い。潜伏をするにはうってつけだろう。

「まぁ、ざっくりと言ってしまえば君たちは人間と体の作りが違うのだ。錬金術師がそうと理解して作った薬以外は効かなくてな。だから、下手に怪我をされると困る」

言いぐさは悪くあるが、確かに洋墨から作り出した薬で本来なら完治までに長くかかるだろう怪我が数時間で治るので、他所への緊急搬送をされてしまったり、かすり傷以上を目撃されれば少々面倒なことになりかねない。
ではどうするか。答えはひとつしかないだろう。つまらなそう顔で資料を見ていた徳田が館長の言葉を継いで言う。

「もし撃たれたら避ければいいってことだろう?」
──じゃあ、簡単だね、と。

一瞬。ほんの一瞬である。
確かに!と思ってしまった。それほど徳田の口振りはあっさりとしてまろやか、柔らかく透き通っており耳馴染みがありよく味の染みた鰤大根に竹串を刺すが如くにすっと腑に落ちてしまったのだ。

「……いやっ、いやいやいやいやいやいやいやいやいや!?そんな、簡単に避けられるものじゃないだろう!?」

思わずといって声を上げたのは佐藤であった。
普通の人間は銃弾なと避けられたものではない、と。

「?なにが?」
「なにがって…普通は銃弾なんか避けられな……あ」

澄み渡る不思議そうな徳田の瞳を見て、はた、と佐藤は気が付いた。
──そう、徳田はなにを隠そう、我が図書館のエースなのである。
その武器は弓であり、弓は総じて回避に長けている。会派の皆が被弾している中で飄々とひとり生き残り、飄々とボスを倒してしまう我らがエースにしてみれば、一般人の放つ銃弾をかわすことなど造作もないことだろう。
だから徳田は、普段通り近くに集まっていた同じ自然主義面子を見た。彼らもまた一様に不思議なことを聞いたというキョトン顔をさらして首を傾げている。
そう、自然主義面子は皆──回避の鬼なのだ。
思い至ってしまった佐藤は額を押さえて徳田に手を振る。

「秋声さん…普通の人は銃弾を避けられませんから…」
「エッ」
「だから、もっと建設的にいきましょうよ…」

虚しそうに言う佐藤を見る目は「そういえば…」となにかを思い出す素振りで──その目を見て佐藤は潜書中被弾をすると「なにを遊んでいるんだろう?」と言うような心底不思議そうな顔をする徳田を思い出した──頷いた。

「そっか…みんな不便だね」
「不便というか、そっちがおかしいんですからね!?」

いいや僕なんて平凡さ、と答えた徳田は正に徳田である。
そんな不毛なやりとりをしている横で「はい!はい!」と手を挙げたのは国木田であった。

「避ける練習しようぜ!」
「ンンン〜〜練習でどうにかなったら皆被弾してないな」

苦笑して答えた菊池に「ちぇー」と国木田は唇を尖らせた。その隣で島崎が「不思議だね…どうして出来ないんだろう…」と首を傾げるものだから「不思議なのは君たちの頭だよ」と芥川が毒吐いた。だから藤村は首を逆に傾けながら「秋声に対してはなにも言えなかったのに、芥川は不思議だなぁ」とこれ見よがしに言うので芥川の額に青筋が走った。

「はいはい仲良くー」
「喧嘩すんなー」

島崎には田山が、芥川には菊池が。それぞれを引きずって距離を取る。

「で、まぁ。そういう話だからな」

脱線した話を戻そうと館長は言う。この図書館の秋声は軌道修正をする秋声──人呼んで軌道秋声ではないのだ。
むしろ、率先して脱線させる方である。だから──

「出会ったら逃げてくr」
「そういう時は、適当な石を拾っておくといいよ」

命大事に作戦を掲げようとした館長に被せて、またも徳田がやらかした。皆の頭にハテナが浮かんでいようとも彼のテンポは変わらない。

「何事もなければ捨てればいい。でも、自分より弱い存在を狙う奴に容赦はいらない。投げろ」

卑劣には卑劣を。
遠距離武器には遠距離武器を。

「僕たちの武器が現実世界でいまいちな威力だとしても、腕力は変わらないからね。これで投げたら、ふふ、そこいらの小石だって立派な武器に変わるってものさ」

うっそりと笑って右手を掲げて見せる徳田(当図書館最強)の力を思い出し、

「ハ、ハイ………」

仕置きをされたことのある面子を始め、皆、一様に震えながら頷くのであった───。








この時の彼らは知らなかった。

「えーそれでは。今日は不審者が図書館内に侵入した際の防災訓練をします。僕がこのスポンジの棒を凶器と見立てて叩いていきます。叩かれたら死のものと考えてください。
じゃあ……僕から、頑張って逃げてくださいね」

いつもの不機嫌の顔をにやと上機嫌に歪ませた青年が告げたその言葉。
それを皮切りに、恐怖の防災訓練が始まることになることを。









190203

久々の投稿になりました
コピペネタからの話なので秋声さんがちょっとトチ狂っているように思えるような、通常通りなような、曖昧なラインになってしまいましたが、私の中の秋声さんの振れ幅の中では普通にアリでした。
というか弓組は自分達の武器特性・身体能力を普通だと受け取っているので普通じゃないと指摘されるとみんな一瞬キョトンとなる。白鳥さんさえもキョトンとなる。



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