カイケイで亜人の目の話
ケイくんが大分卑屈というか。






見られている、と思う。平気な振りをして読書は続けているが、隣に座ったカイがじーっとケイを見つめたまま微動だにしないのだから、流石に気付く。どうしよう、気になる。
ちら、と視線を移せばやはり目が合い、カイがぱちりと瞬きをした。明るい茶色の中に真っ黒な瞳孔、大きな目。
見てもらえたのを喜ぶように喜色に輝く顔。鏡のようなその目に映る自分の顔は凪いでいる。

「…なに?」
「ケイの目ってさ」

伸びた手が頬に触れて、導かれるままにカイの方を向く。向かい合えば鼻先にカイの顔があって、ぎょっと身を引くもがっちり押さえられているから逃げ出せもせず。読んでいた本は手から零れて膝の上に収まった。
カイの人差し指が下瞼に触れる。反射的にくっと目を細めた。

「こんなに赤かったっけ?」

それを拒むようにカイの親指が上瞼を押し上げて無理矢理目を開かされる。意図しない強制的な開眼は眼球を乾かして、じりじりと痛い。
──目の色。
それはケイも気付いていた。ケイの目は赤い。基本的には黒々とした目に変わりはないが、光を帯びると途端に鮮やかな赤に変わる。
昔は。
昔は違った。いや、昔なんて言葉はおかしいか。ちょっと前。数ヵ月前──生前。死ねない化け物、生きた屍となる前は、確かに母や妹と同じ、血の繋がりを感じる暖かな焦げ茶色をしていた筈なのに。
──家族、か。

(会いたくないな)

会うことはないだろう。会うつもりもない。それでも、家族に会いたくないと思う。
会える筈がない。こんな化け物になってしまった自分は家族にとって、今まで以上の厄介者でしかないのだから。
偏見の目はあるだろうが、元より彼女らにとってのケイは不要なモノだったのだから、いなくて清々した筈だろう。なんの、問題もない。だから大丈夫。
乾いた眼球はじりじりと痛む。右に左にと視線を移すも我慢の限界で、ケイは顔を背けた。緩んだカイの手から逃れた瞼をぎゅうと閉じる。痛い。痛いよ、カイ。

「…そうかな?」

じわりと浮かんだ涙が瞬きで睫毛を濡らす。こぼれはしない些細な水分は化け物には分不相応。
緩く微笑んで首を傾げれば、カイの眉が少し頼りなく寄った。

「カイの気のせいじゃない?」

今更、人間だった頃など思い出したくもない。
ヒトを殺した自分もヒトに殺された自分もなくなってしまえばいいのにな。このままカイと穏やかに過ごせたらどんなに幸せなことだろう。

「……そっか」

静かに笑ったカイが、そのまま添えたままの親指でケイの瞼を撫でた。暖かい。

「そうだよ」

カイは、いつまでも暖かくいて欲しいな。願いながら瞼を下ろす。
額を合わせて小さく笑った。








160213

コウ「悪いが他所でやってくれないか」
カイ「ん???」天然
ケイ「うるさいしね」チッ
コウ「もうヤダこいつら」

俺得設定で亜人発覚後から目の色が赤に変わるって言うの書きたかったんだけど、幼少期に死んでると思うしアニメ最初っから赤いからとりあえず自覚すると色が変わるってことでどうでしょうか(後付け)

ケイくんはカイくんに「自分が化け物だから変わったんだよ」とか言いたくなくて誤魔化すし、カイくんはケイくんの気持ちを察して「そっか」と納得してくれるだろうなと。
多分合流後の話。
ナチュラルイチャイチャカイケイ。