5月号ネタバレと盛大な捏造アリ
お金大好きマンはアニメ設定から黒木さん
















「僕が死んだらさ」

そう黒木は言った。フォージ安全へと移る前の日の夜のことだった。
彼は、黒木は、黒服の中でも少し立場が違う。勿論戦闘にも立つが、彼が一番働くのは交渉事だ。頭が良く、必要であればいくらでも弁が立つ、冷静沈着で指揮官たる平沢を支える参謀役、といったところか。
そんな彼の不穏な発言にケイは眉をひそめた。限りなくそうなる可能性が高いのだ、冗談でそのようなことを言って欲しくない。
この戸崎組の面子の中でもケイが一番なついたと言えるのは黒木だろう。静かで干渉を好まず、最低限の言葉で会話が出来る相手。本を貸してくれたこともある。
ケイの気持ちを察してか、彼は小さく眉を上げると唇を歪ませて笑う。

「永井に僕の人生をあげるよ」
「……はぁ?」

言っている意味が分からなくてケイは目を丸くした。それを楽しそうに見ながら黒木は頬杖をつく。

「僕には家族がいない。ついでに、友人らしい友人もいない。だからさ、死んだ後の戸籍とか、人生とか、全部あげる」

作戦が上手くいって戸崎に新しい戸籍を貰ったとして、それはつまり動向を把握されてしまっているということだ。
例えば死亡届けを出さずに年金不正受給事件も過去に聞いたことがあるだろう。役所仕事は杜撰であり、税金がきちんと振り込まれていたら特に問題なく世界は回る。

「年齢、容姿の問題もあるし、永井は顔が知れ渡っているから直ぐには使えないだろうけれど。あと10年もしたら僕の戸籍を使えばいい。税金は貯蓄から自動引き落としになっているし、死亡届けをわざわざ出す必要もない」

黒木に至っては前述の通りに彼の姿がなくても不審がる人物は身近にいないのだから、それを行政に申告する者はいない。
こんな危険な仕事をしている黒木の貯蓄は一般的ではない。10年やそこら税金をとられ、他にもケイが多少使い込んだとしても早々になくなる額ではないのだ。
また、10年と言えばケイも30前となり、10年後の黒木の年齢と見た目が若いだけという言い訳も立つ、だろう。多分。

「……いりません」

フラグって言葉知ってます?とケイは鼻にシワを寄せた酷い顔で言う。どうなっても知らない、と言いながら、それでもこの少年がこの言葉が叶わないことを願っていることは理解している。
それでも黒木は言っておかなければならなかったのだ。縁も所縁もない少年だったけれど──

「永井はさ、自由になるべきだと僕は思うよ」

どうにも気に入ってしまったから。
手を伸ばしてケイの頭を撫でる。細く真っ直ぐな柔らかな髪。白い肌とは対照的な漆黒。ケイは唇を噛んで、でも黒木のそれを受け入れた。
互いに少しだけ素直になったのは──明日から、本当になにがあるか分からないからだった。





「お先」

壁伝いに座り込んだ黒木は最期に、それだけを言った。首からどくどくと血が溢れ、激痛は勿論あったけれど。
どこか、笑いたい気持ちだった。
鞄に入れた、戸籍謄本や貯金の通帳、判子、その他諸々の個人情報の山。あれらは餞別だ。あの子ならば分かるだろう。あの、泣きそうな顔で頷いたあの頭の良い子ならば。
嗚呼、あの日の僕は上出来だった。
驚いたあのこどもの顔といったら!
嫌そうな顔を取り繕ってもなお消せない動揺といったら!

視界が白み、もう指先にも力が入らない。それでも黒木に恐怖はなかった。
自分の死が無駄になることはないと知っているのだから。











160407

お金大好きマンーーー!
平沢さんの次に大好きだったお金大好きマンがまじかーーー!
お金大好きマンとケイくん相性すごくいいと思うんだけどーーー!

まじかーーー!