エイプリルフールコウケイネタ



@遊ぶ程度には気に入っている。

「僕は中野が嫌いだ」

唐突なそれにコウは飛び上がって驚いた。嫌いだとは知っている。今更だ。今更だけれど。驚くには理由がある。
何故なら今日は──4月1日。
つまり、

「ファッ!?永井、今日エイプリルフールだけど!?」

つまりケイの言葉は「好き」ということになる。
別に疚しい意味はないとしても、こうしてひねくれながらも好きといってもらえるならばコウだってすごく嬉しい。
一抹の不安と多大な期待にきらきらと目を輝かせるコウに、ケイはふっと顔を綻ばせた。

「知らないのか?嘘をついていいのは午前だけだ」
「Oh………」

こんな時ばかりはイイ笑顔をするやつなのだ、この永井圭という少年は。
つまり裏もなにもなく、ケイは純粋に、わざわざイベントに乗ってまでコウを落胆させる為に「嫌いだ」と言いに来たのである。全く以て無駄な手間を、わざわざこのケイがやらかしてくれたのである。
それだけ嫌いだと伝えたかったのだろう。がっくりと肩を落としたコウをケイはせせら笑う。

「バーカ」

やはり、輝くようなイイ笑顔だった。





A理解しているコウくん。

「中野、好きだぞ」

言われた言葉にコウは肩を竦めた。

「はいはい、ありがとさん。永井も嘘の為なら俺に好きとか言えるのな」

今日は4月1日、エイプリルフールだ。ケイの言葉はつまりは「嫌い」だと言うことだ。
音だけ聞けば嬉しいが、その意味を把握してまでコウは喜べはしなかった。

「なんだ、もっと慌てふためくと思ったのに………つまらないな」
「お前なぁ…」

むっと唇を尖らせたケイをコウは半眼で睨み付ける。ぎゃんと噛み付いてきたコウをあしらい、遠ざかる背中を見ながら思う。

(エイプリルフールが嘘しか言えないだなんて一体誰が決めた?)

好き、とまでいうと少し過剰かも知れないなとは思う。それでも、嫌いではない。もう、嫌いなどではいられない。
バカだがその素直な性質に救われたことだってある。
でもそれを素直に伝えられないケイは、嘘に紛れてひっそりとそれだけでも伝えられたことに胸の支えが取れた気分で小さく笑みをこぼした。





B四月馬鹿に気付いていないケイくん

「永井!俺はお前が大嫌いだ!」

唐突に宣言したコウにケイは怪訝に眉を潜めた。
今日は4月1日──エイプリルフール。つまりコウはケイに「結構好き」だと伝えているのだ。
しかし、ケイはそう言ったクダラナイモノに興味はないのだ。
であるから、

「ん?知ってるけど?」

こてりと首を傾げたケイはその本心には気付かない。「えっほんとか!?」と顔を輝かせるコウを訝るばかりだ。

「そりゃそうだろ。僕もお前が嫌いだよ」
「そっか!よかった!」

ケイの本心からの嫌い宣言に喜色を浮かべて去るコウを見ながら「マゾかなこいつ…」と鼻白む。
しかし相思相嫌を喜ぶコウにもやりと腹の底に苛立ちが溜まるのは、近所の犬に吠えられた時の気分に似ていた。





C四月馬鹿を理解して便乗するケイくん

「永井!俺はお前が大嫌いだ!」

唐突に宣言したコウにケイは怪訝に眉を潜めた。
今日は4月1日──エイプリルフール。つまりコウはケイに「結構好き」だと伝えているのだ。
しかし、そうだとしてもコウに嫌いと言われるのは腹立たしいものがある。…そうだな、近所の犬に吠えられた時の不快感に似ている。
だからケイは報復しようと思った。

「そう。僕は中野のこと好きだよ」

にっこりと笑う。嫌味でもなくこう返せば、流石にコウだってケイがエイプリルフールを理解し便乗した上で「嫌い」と言っているのが分かるだろう。

「………」

しかし、コウはぽかんと目を開くと、次いでみるみる顔を赤くした。ぐにゃんと歪む唇を隠すように手を添えて、喜色を湛えた瞳がケイを貫く。
──こいつ、純粋に喜んでやがる……!

「ば、ばか!嘘に決まってるだろ!」
「あああそうだよなあそうに決まってるよなあアハハハハ!」

思わず叫んだケイに、コウはあわあわと左右を見渡して乾いた笑い声を上げる。けれど、嘘でもケイに「好き」と言われたのが嬉しくてついつい顔がにやけてしまう。
それがどうにも気恥ずかしくて、ケイは立ち上がるとコウの頭を叩いた。ぱこん!といい音がする。

「ばっか!お前ほんとばか!僕は嫌いだって言ってるんだぞ!?」
「いってーな!わかってるよ!わかってるけど…嬉しかったんだ…!」

そんなことを怒鳴り合う少年ふたりを見ながら戸崎は呟いたのだった。

「若いな…」

そして平沢は「仲の良いことは良いことだ」と満足げに頷くのだった。






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エイプリルフールコウケイネタ
コウケイってよりコウ+ケイ