お昼寝という名のサボり

太陽がジリジリと熱光線を私たちに送っている。
その光線は、焼き殺そうとしてるんじゃないかというぐらいねっとりヒリヒリとしていて痛い。
日焼け止めは一応塗ってきたけど、きっと汗で落ちてるだろう。
これから存分に紫外線を浴びるであろう腕や足は、赤くなっちゃうなぁと考えると憂鬱な気分になった。

「はい、休憩!ちゃんと水分取るんだよ!」

幸村の声がコートに響く。
私はその声を聞き、用意したタンクとコップをベンチまで運ぶ。
わらっと集まった男子集団は見ているだけで、暑苦しい。

「暑いって顔してるね」

後ろから話しかけられ、驚き振り向くと幸村が立っていた。
彼はこの暑い中、ジャージを羽織ったまま、信じられないほど涼しげにテニスをしていた。

「事実暑いよ?」
「暑いと思うから暑いんだよ」

そうふんわり笑う幸村を信じられないと見やると、彼は楽しそうに笑った。
テニスをしてるときには見れない笑顔。
私は、彼らのテニスしているときとそれ以外のときのギャップを見るのが好きだった。

「5分後に再開するからね!」

再びキリッと部長顔になった幸村にはい!という元気のいい声が返ってくる。
私の倍以上外にいるはずの彼らが元気で、私が元気ないというのも可笑しな話しで。
よしっと気合を入れ直すと、すでに空になったタンクを持ち上げた。

「連先輩!」

向こうから赤也が走ってくる。

「仁王先輩見ませんでしたか?!」
「見てないけど…?」

どうしたのと問うと、赤也は今日こそ涼しい休憩ポイント教えてもらおうと思ったんス!と悔しそうに顔を歪めた。
猫のようにふらっといなくなる仁王が休憩時間になにをしているのかは、私も知らないことだった。

「あー!もう!仁王先輩いないんスけど!」
「あいつは…!またサボりか!」

赤也は腹いせにか、通りかかった真田に聞こえる声で仁王がいないことを伝える。
真田の怒っている声を聞き、にししと笑った赤也は私の方を再度向いた。

「あ、連先輩!仁王先輩探してきてください!」
「え、私だって知らないよ?」

むしろ柳生の方が詳しいと思うけど、と伝えると

「いや、でも俺らもう休憩終わっちゃうし…!お願いします!」

と赤也は全速力でコートへ駆けていった。
私は1つ溜め息をつき、タンクを部室に置くと仁王探しにいくことにした。


学校の日陰という日陰を探し回った結果、校舎裏の木陰に探し人がいた。
すやすやと気持ちよさそうに寝ている仁王に近寄ると肩に手を置き小さく揺らす。

「仁王、仁王。休憩終わったよ」
「…ん…なん、じゃお前さんか」

ふあと仁王はあくびをする。
さらっと髪が落ち、それだけなのにドキッとした。

「なんじゃじゃないよ、幸村に怒られちゃうよ?」
「それは嫌じゃなぁ」
「でしょ?ほら行こう?」

私は動揺としているのを悟られるのがいやで、来た道の方を向く。
コートに向かおうとしたが、手首を掴まれた上に引っ張られそのまま仁王の上に倒れこんでしまった。

「ご、ごごごめん!!」
「大丈夫じゃ」

私の下でククッと笑う仁王に目線が反らせなくなる。
からかっているというのは、わかっているけど、整った顔で笑われるとドキドキする。
なぁ、と仁王から声が発された。

「心地ええじゃろ?」

さあっと風がとてもタイミングよくふいた。

「なにここ…!涼しいね…!」
「じゃろー、ちゃんと座りんしゃい」

座り直して木にもたれ掛かると鳥の声とコートからみんなの頑張っている声が聞こえる。
風の通り道なのか、風もとても心地よい。
汗が引いていき、ほどよい温かさと涼しさで眠気が一気に襲ってきた。
そういや、昨日遅くまで起きてたもんなとそんなことが頭をよぎる。
仁王の言い訳さえも子守唄に聞こえてくる。

「まぁ、たまにはええじゃろ」

そんな仁王の声につられるように、私の瞼は落ちていった。

「おやすみ」

そんな声が聞こえたような気がする。


◇◇◇
(Side 幸村)

「部長―!いましたー!」

赤也の声が遠くから聞こえる。
声を頼りに、場所に近づいていくと校舎裏の陰にある木陰に並んで寝ている二人がいた。
仁王の肩にもたれかかって寝る連とそんな連の頭にもたれかかっている仁王。
温度がここだけ急上昇しているように思える。
仲良しだね、うん本当に。

「あーあ、だから言ったのに。誰、連を仁王のお迎えに向かわせたの」
「お、俺っす」
「赤也、とりあえずグラウンド50周いこうか」

青ざめた顔をした赤也は、じりじりと下がるとたまらず走って逃げだした。
俺そんなに怖い顔してたかな?
頬に伝った汗を肩で拭うともう一度二人を見る。

「…今日は、ほんとにあついね」


お昼寝という名のサボり
(頭の重さを半分こ)

サークル「DROOM」提出作品(キーワード:「あーあ、だから言ったのに」、半分こ)

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