血まみれ逢瀬



※流血注意




「なあ、つまんなくなったから死ねよ」

ワイヤーに絡まり、切り裂かれていく身体を見るのも飽きたので、とりあえずさっくりととどめを刺す。
特にこれと言って面白い断末魔を上げなかった。将来有望と言われてた殺し屋だけどこいつつまんなかったな。

「さーて」

携帯を取り出してとある番号へかける。
相手は死体処理班のレン。優秀な死体掃除担当兼オレのお姫様。
任務外の死体だから確実に嫌な顔されるだろうけど、そんな表情も可愛いと思う。

『…ベル?』

ちょうど仕事中らしく、『う゛お゛ぉお゛い!』とスクアーロの声がうるさい。
レンもうるさかったらしく、『静かにしなさい』と背後へ注意した。

「もしもしレン?殺っちゃった」
『また?今どこにいるの』

現在地を伝えると、ため息が聞こえた。

『今行く。大人しくしてて』

電話が切れる。
待ってる間暇なので、さっきの死体で遊ぶことにした。
だいぶ切り裂いて殺したから遊べる部分があるかどうかわかんないけど。


***

「相変わらず無惨」

レンはやってくると開口一番そう言った。案の定、少し嫌そうな顔。
遊ぶところを探しながら遊んでいたら、死体はさっきよりスプラッタになった。
まあ結局毎回こうなるのはレンもよく知ってるんだけど。

「だってオレ王子だもん。それに待ってる間暇だったんだぜ?」
「掃除するから、どいて」
「やーだ」

抱きついて、死体に触れるのを阻止する。
別に掃除してもらうために呼んだわけじゃないし。

「ねえ、覚えてる限りさ」

少しだけ感情に乏しい目の色が俺を見る。

「ここ2週間くらいベルが任務に関係ない誰かを殺しては、私が呼ばれてる気がする」
「気付いた?」
「まさか」
「ごめんごめん、わざと」

うっすらとレンが目を細めた。呆れた、と呟いたのが聞こえる。

「会いたかったし」
「…だからって、殺す?」
「死体作ったらレンは片付けに来るじゃん。確実に会えるしレンの懐も温まるしいいことづくめ」

…まあ、当のレンはお金をじゃんじゃん使うタイプじゃないけど。

「普通に呼んで。立て込んでなかったら会えるから」
「そう?」
「今までの死体が不憫」

レンは死体を見て軽く目を伏せる。

「オレとレンの逢瀬の理由になったんだぜ?光栄だって」
「そんな理由で殺されるなんて全く思って無かったでしょうね」

あ、これ完全に呆れてる。だからって反省しねぇけど。

「オレと会うのは嫌?」
「普通に会いたい」

いい加減放して仕事したい、とレンが言うけどやっぱ放してやんない。
ため息ひとつついて呆れたような声が続けた。

「終わったら好きにしていいから」
「マジで?」

それなら放そう。ああ今日は何しよっかな。
ナイフの試し切りしちゃおっかな、久々に。楽しみになってきた!

「…ごめんなさい、」

レンは死体に話しかけつつ淡々と掃除する。

「私の王子様、わがままで常識外れだから」

声は穏やかで優しい。これで扱ってるのが死体じゃなかったら映画のワンシーンっぽい。
手袋を血で汚しつつ今日も黙々と仕事をこなす。

「でも私はそれでも好きなの」
「なあレン、それ死体じゃなくてオレに言ってよ」
「…好きよ、ベル」

微笑んで言ったら、また作業に戻った。
ああ早く終わんねーかな、いっぱいやりたいことがあんのに。
まあ、後でたっぷりと愛し合えばいっか。


血まみれ逢瀬



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お題:「すみません、わざとです」

見事に血なまぐさい話でした、ごめんなさい。
ベルはナイフの試し切りを他人でやるイメージがあるのできっと彼女は生傷が絶えない生活だろうな。

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