今日は特別


「連ちゃんはクリスマスプレゼント、何かほしいものはある?」

雅臣さんにそう尋ねられたのはクリスマスの一週間前のこと。

『クリスマスプレゼントですか…突然言われると思い浮かびませんね。雅臣さんは?』
「僕?そうだな…この年になると特にこれがほしいというのはないかな…」

あはは、と笑う雅臣さんにつられて私まで笑ってしまった。クリスマスプレゼントか…子どものころはあれがほしい、これがほしいと一年中クリスマスが待ち遠しかったけれど、年々ほしいものがなくなってきている。
好きな人と一緒に過ごす、それだけで何もなくても幸せなのだ。

「じゃあ、クリスマスに一緒に探しに行こうか。仕事、休めそうなんだ」

*****

クリスマスの今日、朝から雅臣さんとショッピングモールに来てお互いにクリスマスプレゼントを探した。普段仕事の忙しい雅臣さんとこうしてお買い物できるなんて、それだけでクリスマスプレゼントみたいだ。

「連ちゃんは何かほしいものうかんだ?」

手をつないで歩きながら、どこのお店に入ろうかと悩んでいると雅臣さんが私のほうを向いて質問してきた。

『えーっと、考えてはみたんですけど…なかなか思いつかなくて。雅臣さんはどうですか?』
「僕はそうだな…連ちゃんと一緒にいられればそれで満足なんだけどね」

そう言いながら、軽くつながれていた手を雅臣さんはぎゅっとつなぎなおした。そんな些細なことにすらドキドキしてしまって、顔が赤くなったことを雅臣さんにばれないように少し俯いた。

「連ちゃん、手、冷たいね。
あっ!そうだ!手袋なんてどう?クリスマスプレゼント」
『手袋ですか…たしかに持っていないので、いいかもしれませんね』
「そうだよ。女の子は体を冷やしちゃいけないからね」

そう言って微笑んだ雅臣さんは、つないでいる私の手を自分の口元まで持っていくとチュッと軽く口づけた。

『まっ、まさおみさん…!!』

雅臣さんの突然の行動に、俯いていた顔を上げた。

「ふふ。真っ赤になってかわいいね」
『なっ、なにするんですか…!!外でこんな…』

こんな人が多い所で…誰かに見られていたかもしれない。そう思うとどんどん恥ずかしくなってきて、赤い顔のままきょろきょろと辺りを見回してしまう。

「大丈夫。誰も見てないよ。みんな自分たちの買い物に夢中だからね」
『だからって…』
「それに、クリスマスだしね。
少しくらい羽目をはずしてもいいんじゃない?」

微笑みながらそんなことを言われてしまっては返す言葉がなくなってしまう。

「さあ連ちゃん、手袋、探しに行こう」
『は、はい…』



クリスマスだから

(今日は特別です)



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