瞳の中のシルエット
彼女の瞳に映る男が僕だけならばどんなによかっただろうか
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『要、里見様はいつ帰ってくるの?』
「さあ…最近教会の仕事が忙しいみたいだからね」
なんて少し冷たい言い方をすればあからさまに悲しそうな顔をして『そう…』と彼女は息を吐いた。そんな泣きそうな顔しなくても…もう一生会えないわけでもあるまいし。
「莉芳のことが心配?」
彼女はいつも莉芳のことを考えている。
『里見様、いつも忙しいし疲れてるんじゃないかと思って……』
「連ちゃんはほんとに莉芳のことが好きだね」
『そ、そういう訳じゃ…』
あぁ…その恥じらいで赤くなった顔が僕に向いていたらどんなに幸せだろうか。
わかっている。彼女にとって莉芳が特別なことも。莉芳にとって彼女が特別なことも。
身寄りがない彼女を引き取って、ここまで育てたのは他でもない莉芳だ。
なぜ莉芳が彼女を引き取ったのかはわからない。一般人には見えるはずのない八房が見えたからなのか、あるいはただ単に彼女を憐れんでの行動だったのか…今となってはどっちでもいいけどね。
莉芳が彼女を引き取っていなければ、彼女はきっと教会に引き取られていただろう。あんな息苦しい教会で生活することを考えれば、この家に引き取られたことは彼女にとってラッキーだっただろう。
彼女が莉芳を好きになるのはわかる。でも莉芳は……
いつも無表情だからなー。彼女のことをどう思っているのか…
まあ、僕にとっては莉芳の気持ちなんてどうでもいいけど。
「仕事が一段落すれば帰ってくるよ。そんなに心配しなくても、莉芳なら大丈夫だよ」
『うん…そうだね』
そう言ってほほ笑んだ彼女は本当に莉芳のことが好きなのだろう。
僕がどんなに彼女を想っても、彼女の瞳に映っているのは莉芳のみ。
あぁ…彼女の瞳に映るのが僕だったならば、どんなに幸せだろうか。
莉芳なんかよりも、いや、世界中のだれよりも僕は彼女のことを想っている。
彼女を無理やり自分のものにすることは簡単だ。
でも、そんなことをしたら彼女は涙が枯れるまで泣き続け
その瞳に僕の姿を映してくれなくなるだろう。
それならば…彼女の心が手に入らなくても、一緒にいられる今のほうが幸せなのかな。
たとえ彼女が僕を見てくれなくても
彼女が僕のものになる日がこなくても
僕は彼女を想い続ける。
僕の瞳に彼女が映り続けるかぎり。
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瞳の中のシルエット