イヴ


ホッケーマスクを被り、チェーンソーを肩に担いでジェイソンの真似事をする彼。ランタンを囲むようにワルツを踊りだす少年。毒々しい葡萄酒に口付けをする双子に、揺れる影法師。不器用にステップを刻む少女は、少年と手を取り合って怪しく笑う。甘く香るキッチンからは焼きたてのクッキー。曇りガラスの向こうは吐息の白だけを残す。私はドアを叩く音を待っている。甘ったるい砂糖菓子だけを求めた老婆には無情にも歯はなく、シーツを被っただけの子供がはしゃいで家の中を駆け巡った。いたずらに風が吹けばドアを開けた。もっともっとイタズラをして私を困らせて頂戴。手に染みた甘い匂いがね、いくら洗ってもおちないの。蝋燭の灯りを揺らめかせ、呪術を声に乗せれば、かかしは独りでに動き出した。


だって今日は十月のイヴですもの。




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