魔女


夢は見続けていたら叶うんだって誰かが言っていた。私は同世代の子と同じような夢をみていなかった。魔法少女じゃなくて魔女になりたい。だって、魔法少女は悪い怪獣、生物、物体、よくわかんないけど、悪と戦わないといけないじゃない。まず魔女自体が悪の異端者として見られているのに、どうして仲間と対立しなきゃいけないのかわからない。それに私、戦うのはいやなの。せっかくの魔法を戦うことに使いたくないの。あとよく見られる、あの甘ったるい格好。私、ああいうの死んでも絶対着たくない。それだったら悪に染まりたいわ。

だから魔女に憧れるの。ううん、魔女になるの。魔女はね、戦わないの、魔法を自在に操ってね好き勝手するの。自分の為だけに使えるの、とても美しいの。でもこの世界に魔法はないってみんながいう。私は、あると思う。だって、魔法って言葉があるのだから存在して当然だと思うだけ。ただ、目の当たりにしていないから信じていないだけ。ううん、もしかしたら信じないように魔法をかけられたのだわ。それはサンタと同じような存在だと言えるんじゃないのかな。誰も見たことないけど、信じる人は多い。信じる人はサンタはいると思ってる。じゃなきゃ、クリスマスに赤い格好をして白髭なんかつけないでしょ。魔女はただ信じている人が少ないってだけ、たったそれだけのこと、いないのなら私が魔女になればいいの、たったそれだけのこと。

黒い三角帽に引きずるような長いドレス。分厚い魔法書と書かれた本に秘密のレシピ本。傍らには愛しの黒猫。見た目がまず肝心なのよ。形から入るものなの。杖は庭に生える木の枝を折って、自分でヤスリをかけて形を整える。箒だって頑張って作ったわ。やれば出来るの。人ってみんなそうゆう生き物なの。ただみんなはやらないだけ、私は違う、それをやるの。ここの差が魔女と人間の違いだと思う。

箒を作ったものはいいけど、実は私、高所恐怖症だから飛びはしないの。いいえ、けっして無駄じゃないわ。だって、これを持っていたら魔女らしさがでるから。きっとね、今いる魔女たちは自分の身を隠しているの。何でかって、そりゃあ不気味がられてしまうからよ。だって、人には出来ないような事が出来てしまうから。そんな神の真似事をやってしまうと、軽蔑の眼差しが突き刺さり、いたたまれなくなる。昔は魔女狩りとか、いろいろ酷い目にあっていたから本能的に嘘を吐くし、偽る。その為に隠しているの。だから、みんなは魔女がいないって思っているの。

魔女はね、いるの。物語に出てくるような怖い魔女ばっかりだと思っているだろうけど、そんなこともないわ。私がそうだもの。でもね、目立つ魔女は薬物を多様に使いすぎちゃうからね、ばれてしまうの。だから魔女のイメージは悪いの。いやね、ほんと、恥だわ。

私は汚名返上も考えて魔女になりたいの。いいえ、私が魔女にならなくてはいけないの。今いる魔女たちだけでは何も残せないまま廃れていってしまうわ。昔は、あんなに、恐れられていたのに、今は馬鹿にされ相手にもされない始末よ。このままでいいはずないわ。今日まで築き上げられてきた魔女の歴史を、呆気なく終わらせてたまるものですか。

けれどもいくら私が、立ち上がれ、と言っても誰も聞く耳を持ってくれない。もう魔女は廃れてしまったのかと絶望したわ。魔女の血は人間の血で汚れ、薄れて、そうして消えてしまったのね。はぁ。情けない。なら、私は魔女の中で救世主になればいいのよ。そう、その為には私が魔女になるしかないの。

ねぇ、魔女さん。私を魔女にしてください。私が魔女になったら、きっとこの世界は確実に今よりよくなるわ。そうして私は今日も、夢を見るために眠るの。



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