はぐくむ



「人は生まれ死ぬ。この自然の営みに逆らえる者は誰もいない。これが摂理と言うものだろう」

この世の全てを見切ったように言った貴方の言葉がどうにも上手く飲み込めない。

「貴方は愛を受け入れなかったから、そんな捻くれているのよ」

涙さえも枯れてしまった、まるでがらんどうのような貴方は、それでも私の心を射ぬくような鋭い目をして、酸素を体内に取り込んだ。

「愛などといった得体のしれない感情のようなものを知ったところで、なんだというのだ」

難しい事はよく分からないが、貴方が愛に飢え、無意識に欲していることは一目瞭然だった。唯一の肉親であったお母さんが、目の前で、ポックリいってしまったのだから。

「愛とは育むものよ」

息を止めるような仕草をして、貴方は静かに目を閉じ、弱い雫を流した。だから私は小さく揺れる背中に唇を落とすように抱き締めてあげた。

「貴方はお母さんに、大事に育てられた立派な人よ…これも、きっと、摂理と言うものね」




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