なんて素敵な

パラパラと落ちる雨。上から下への一方通行。特別な事じゃない。雨だなんて。滅多な事じゃない。だけど嬉しくないのはなんでだろう。

朝の光から逃げ出した。時間は止まる事を知らない。適当に着たTシャツがダサかった。おまけにヨレヨレだった。憂鬱以上。どう表現していいのか分からない。

イヤホンの、あの、ふにふにとした、先端の、あれが、無くなった。よく外れて、よく無くしては、すぐに見つけていた、のに。無くなっちゃった。

コバルト色の空は、笑う。雫が冷たい。雨は銀河のキラキラを集めたものだって、思っていた。学校なんて、やっぱ行く所じゃなかった。素っ裸が恥ずかしくなる。

この着ているTシャツすら恥ずかしくなってパーカーを羽織った。でもどうやったって、Tシャツはダサい。だからパーカーのチャックを口元まで上げて、フードも被った。

これでもう、何も言わなくて済む、何も聞かなくて済む。何も気にしなくて済む。なんて素敵な、こと。ポケットに手を入れたら、イヤホンの無くしたあの、ふにふにが見つかった。良かった。

雨の止む知らせはない。イヤホンで耳を塞ぐ。声にならない気持ちは雨に溶けて、落ちる。

無音。透明感。パーカーは雨を染み込ませて、じわじわと身体を冷やす。だけどまだ、光は要らない。




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