「ねぇ、どーして伊月さんは女の子じゃないんスか?」


伊月さんを縛って肉欲任せに抱けば、思った事を声に出していたらしい。ぎゅう、と性器がほどよく締め付けられた。湿ってきた伊月さんの胎内は温かく、やっと俺を受け入れてくれたみたいに思えた。今にも精を吐き出してしまいそうになったが、奥歯を噛みしめてこらえる。強姦擬いの行為。いけない事だとは頭では分かっている。分かっていてもどうしようもなかった。儚くも虚しい俺の片想い。性別という障害があって、決して報われない片想い。でも、だから、なんだ。世界のどこかでは同性で結婚できるし、セックスできるし、偏見はない。けれどここは日本。余所は余所。伊月さんはそう言うに違いないことは明白だった。だから、罪を犯した。学校指定のネクタイを無造作に口に詰め入れて、簡単に吐き出されないよう猿轡を上からはまらせた。伊月さんの綺麗な唇に傷をつけるような真似だけはしたくなかったからネクタイがちょうどいいクッション代わりになって助かる。その上、ネクタイは毎日身につけるものだから伊月さんの体液が染み付けばいいとも思う。手には跡がつかないように、尚且つ、容易く解かれないようにタオルで膝と一緒に縛って拘束した。こうでもしないと、伊月さんは俺から逃げてしまいそうだから。伊月さんが女の子だったら、やっぱり今みたいに肉体を無理に繋げて種付けするけど、男だと無意味だ。子宮がないから歓迎されない精子。気に食わない。俺の子を孕んじゃえば、どこの誰にも渡さなくて済むし、俺の思いが報われるというのに。


「ねぇ、どーして伊月さんは女の子じゃないんスか?」


指先でそっと、伊月さんが生きている証を確かめた。


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