「黄瀬くん、好きですよ」
「あ…、あ…くろこっち…」
「愛してます、…黄瀬くんは?」
「ん、すき…くろこっち、すき」
愛していると言ったら好きと返ってきた。愛してると好きの厳密な違いは中学生の僕らにはまだ分からないが、ただ愛してると好きは明らかに違って好きよりも愛してるの方が言われて嬉しい。
薄暗い部屋のフローリングに両手両足を拘束されているにも関わらず正座をして、首輪をつけて、泣きながら僕に好きだと言う。というか、それしか言っていない気がする。泣きながら笑う黄瀬くんに触れるだけのキスをした。
「黄瀬くん…僕は黄瀬くんに、」
「くろこっち、もっと、もっと…ね?」
「………キス、ですか?」
「それ以上も、ス……くろこっち」
ねぇ、と首をかしげてきた。輝きを失ったその瞳に歪んだ自分が映ったと思ったら優しく揺れてどこかに消えてしまった。
「黄瀬くん、僕は黄瀬くんが好きです、愛しています……僕がいま、黄瀬くんに酷い事をしているのを、分かっているんですか?」
顔を両手で掴んで無理やり焦点を合わせる。虚ろな目をしながらも笑っている黄瀬くん。僕の手は涙でどんどん濡れていく。
「オレも…くろこっち、すきっス」
黄瀬くんが眉を八の字にしながら笑うと首輪から繋がっている鎖が冷たく鳴った。胸を突き出して目の前の僕に体を預けるようにもたれかかってきた。手錠さえしていなかったら首に腕を廻されていたのだろう。
頭を上下に動かしながら器用に頬擦りをして、また僕の頬を涙で濡らしてきた。僕は黄瀬くんの身体に腕を廻すことなく、ただ俯いて、呆然と黄瀬くんを心音を感じている。
「ぼくは、君を壊したいくらい…なんですよ?……黄瀬くん」
title:愛してるって、言って