ロマンチストは死にました



風に跨いで、月に登って、ちゃんと君を見つけてあげる。


それがロマンチックだとは思えなくて、はた、と首をかしげたら、「それ、めっちゃかわいい」と抱きしめられて、何も見えなくなった。


「どうした…、こわい?」


ちゅ、ちゅ、としつこめにキスをされて、されるがまま、いつの間にかベットの端に座っていて、Tシャツの中に手が、忍び込んでいた。

こくん、と頷けば、大丈夫、と気休めの言葉。また、唇を持っていかれた。モゾモゾ、服の内側が、くすぐったい。


「い、やだ、」


額を重ねて、唇を離す。


「なんで…」


視線を足元に落とせば、彼の怒りを含んだ、低い声が腹に響いた。彼はそうでなくても、こっちは初めてなんだから、もっと優しく、慎重に、丁寧に、愛を感じたいわけで、それが伝わらないのかな、と視線を絡ませてきた。

つり目で、シャープな輪郭。パサパサ、ストレートで短い髪が耳にかけられた時のハネが、気になって、手を伸ばした。


「やりたいの?」


頬に触れそうな距離にきたとき、彼は手首を掴んで、足の付け根、ジーンズの合わせに手の平を押しつけた。熱くて、堅くて、恥ずかしくて、目を逸らし、身を引いた。


「ち、が…っ」
「充分、誘ってんじゃん」


彼の、中心に触れて、心臓が痛い。浅い呼吸ばかり繰り返して、生きてるを実感出来ない。こんな全速力で走らせないで、これじゃあ、保たないよ。


「やっ、まって、ごめん、こわい」


はふはふ。逡巡する思考回路は熱暴走。じわり、手の平が滲んで泣きたくなった。


「……焦らすねぇ」


おっきな溜め息。彼は手首からスルスル降りて、手の平を握った。汗、かいてるの、ばれた。恥ずかしくなって、ヘソを見た。


「まあ、ゆっくりやろうよ……」


頭を撫でられた。おずおずと顔をあげれば、穏やかな、表情。ホッとした。


「…今は見逃すだけ、逃がさないよ」


耳たぶを揉まれて、変な気分になる。目を瞑って、キスを強請る。やわやわ、齧るような、甘酸っぱい口付け。


風に跨いで、月に登って、ちゃんと君を見つけてあげる。


その時、ひとつになろう。


ロマンチストは死にました。





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