遊拐犯
幼い体温を抱き締めて一呼吸。
「おじちゃん」
こぼれ落ちそうなほど大きな両目に吸い付くような肌。りんごのように赤く染まった頬と鼻の頭。
「だっこして」
もう抱き締めていると言うのに、可愛く耳元で無自覚のおねだりをされて、折り畳んでいた膝を伸ばして両腕に抱き抱えた。
「きゃあ!たかいたかい!」
腕の中で跳ねるような仕草をするものだから、落とすまい、と今より強く抱き締めた。
「おじちゃん!」
呼ばれて顔を合わせれば、くしゃりとした笑顔で「なんでもない!」と言われた。
おじちゃんと呼ばれた俺は、柔らかく温かい体温を手放すタイミングを見失ってしまった。