あした



明日なんて来なくていいんです。

そんなこと言ったら、誰かが生きたくても生きれなかった明日なんだよ、とかなんとか言われたから、だったら死にたくても死にきれなかった弱虫は明日も生きると言う苦痛の中で生かさるってののは本当に生き地獄なんだからいっそ一思いに殺して明日なんて来ないようにさせてあげるそんな優しさは君にはないのかな、なんて言いたくなるのをグッと飲み込んで、そうだよねって笑う僕。

明日晴れたらいいね、なんて重たい雨雲を窓から様子を伺いながら言われたけど、どうやって言葉を返したらいいのかわからないから、明日が晴れだったら何かあるの?、なんて聞いて後悔。君は振り返って、意味が分からないと口には出さないだけで首をかしげてしまったのだから。

僕は本当に死にたいと思った。俯いて握りこぶしを作って、あちこちに目配せをして、目頭が熱くなって、君にどんな顔をして、何を言えばいいのか全く見当がつかなかったのです。

雨音は激しさを増すばかりです。僕を洗い流して、綺麗さっぱり、存在も、僕がここにいた過去も記憶も、君の中にいる僕も、流して欲しいのです。僕を強く打ち付けて、殺して欲しいです。出来ることなら、彼女と一緒に殺して欲しい、です。

何も言わない僕に痺れを切らしたのか、君は僕に爪先を向ける。殴られるのか、いいや、君にはそんなことできない、出来るのは平手打ちくらいだろう、ああ、そうやっただけで死ねたならなんて幸せなのだろうか、しかも君の手によって、死ぬ。さあ、叩いてくれ。僕は生との決別と覚悟して顔を上げる。


「明日が晴れだったら動物園連れていって」


君は無邪気にそう笑った。僕には何を言っているのかさっぱりわからなかった。それがどこの国の言葉で、なんという意味で、その言葉が僕に響いた瞬間もたらした胸の奥が熱くなった現象とどんな関係があるのか、分からない。


「雨だったら水族館に行こうよ」


またも君は僕の頭では理解し難い言葉を言った。僕は瞬きを繰り返すのが精一杯で、呼吸の仕方なんて忘れてしまって、口を開閉させる。

ふふっ、と君がいたずらに笑う。その顔が可愛くて、僕の目にだけ映っているのが恐れ多くて目を反らしてしまいました。君は不思議そうにして僕を見つめてきます。


「なら、雪が降ったら?」


なんて、僕は思ってもいない言葉を口にしていました。君は一瞬だけ目を丸くして、そうしてすぐに笑いました。


「その時は私の家に来て」


ごくりと喉仏が上下しました。それは口の中に溜まってしまった唾液を呑み込むのと同時に、なんで?と問おうとした言葉を呑み込んだだけであって、けっして疾しい事なんて、いいえ、これっぽっちは考えてしまいました。


「ほらね、明日が楽しみでしょう」


君はそう言って、僕の胸に両手を預けて、爪先で立って、グッと首を伸ばして顔を近付けて、触れるだけの接吻をして、また僕に頬笑んだ。





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