ナミダイロ
少しだけ息を止めてみた。そうしたら、特に世界は変わらなかった。本当にそうなのかなって、視界を閉ざしてみる。真っ黒じゃなくて真っ暗。さっきまで見ていた光の残像だけが怪しく揺れる。そうして目を開けた。
それは何も変わっていなかった。さっき見た景色と今見ている景色の何が違うって聞かれたら、雲が東にちょっと流れただけ、としか言えない。なんにも、なんにも変わっていなかった。
だからきっと、自分が死んだ後の世界は、いまみたいに、何も変わらず、ただ悠悠閑閑と、相も変わらず流れていくんだなって、やっと納得できた気がした。
そうしたら、なんでだろう、急に肩の力が抜けたみたいで、ひょっこり涙が出てきた。だから、涙をしまおうと手で涙を拭ってみても、ぽろぽろ、ぽろぽろと溢れてきて、なんかもう、ぜんぶが馬鹿らしくなって、とりあえず、泣いているわけにもいかないから、息を止めて笑ってみた。
でも苦しくって涙が出てきた。
その時に見た景色は、驚くくらいにキラキラ、キラキラ光って見えた。