皮肉な話
豚の目の解剖をする。豚の目は人間の目と構造が似ているらしい。それは生物の実験だった。女の子達は気味悪がっているのが大半で、ごく一部が平気そうな具合である。男の子はいくつになっても好奇心旺盛のようで目や解剖について各々盛り上がっていた。
解剖が始まる。
目が渡される。出席番号で四人班をつくる。そうして、その班に一つずつ豚の目が配られた。あちこちから悲鳴が聞こえた。野太い声も声高となり聞こえてくる。
目はやや濁っていた。生前は輝いていたであろう、つぶらな瞳。ご丁寧に目だけを抉りぬいたらしく、視神経を覆う肉が生々しくついていた。
「かわいそう」
誰かがそう言った。私は不愉快になった。きっとこの豚は養豚場で飼われていたのだろう。養豚場の豚の末路は食肉となる。そうして人間たちの血肉として生まれ変わり構成されていく。考えてみてほしい。この豚の目は食肉とされた豚の目なのだと。
私たちは食事で肉が出てきた時に「かわいそう」と言うのであろうか。
いいや違う。「おいしそう」と言うのだ。