愛を謳おう



抱き締めたら抱きしめ返してきて、鼓動が、重なる。わずかな体温が、どうしようもなく愛おしくなる。愛してる、と言ったら、私も、って返ってくる。

君の上で上下に律動して、熱を帯びた息を浴び、精を吐き出す。そうしてすぐに唇を貪る。甘い声が僕らの隙間からこぼれる。それさえ勿体ないと思える。小さくてまるっこい手が必死に僕の背中にしがみついて、控えめに爪を立てる君がわかいい。色素の薄い肌は汗ばみ、紅をうっすら滲ませ、遠慮がちに足を絡ませてくる。

ああ、やめたくない、はなしたくない。大好き、大好き、あいしてる。君は苦しいと胸を叩いた。いやだ、はなしたくない、やめたくない。あいしているよ。ずっと、こうして繋がっていたい。

この鼻も口も目も耳も頬も、首も胸もグロテスクな内臓も、ああ、あいしているよ。噛り付いて、しゃぶって、すすって、貪って、咀嚼。ああ、あいしてる。好き好き、大好き。僕の中に落ちていく君の肉体。染みる、巡る、消える。そうして、ゆっくり、じっくり時間をかけて僕の身体を構成していくんだ。そうさ、君と僕は永遠に一緒さ。口約束なんかじゃ物足りない、指輪でも満足しない、あの紙切れだって駄目。こうして、実行する事、それこそが真実の愛。いつか君が欲しがっていたものだ。僕は君が欲しいな。だから僕が真実の愛をあげるから、君は僕がもらうよ。ああ、愛してる。

胃が満たされた。君は変わり果てた姿になってしまったね。真っ赤だ。生暖かいが燃えるように赤い。もはや原型を留めていない、一人の人間の塊があった。ついさっきまで、愛を謳っていた、息をしていた脈を打っていた。しかし、そこには生はない。みにくい。

それでも君を愛しているよ。いっただろ、これが永遠、真実の愛。それと引き換えに僕は君をもらった。君は僕に望んだのだ。なら僕は君を愛するまでだ。それをどうしようと僕の勝手だ。ああ、あいしているよ。返事がない。

抱き締めた。うごかない。体温も、ない。ああ、ああ、ああ。ねぇ、僕はこんなにも愛しているんだ。だから君も返事をしておくれ。

僕は食べたくなるくらい君を愛しているんだ。君はさっき、私も、って言ったじゃないか。じゃあ君も僕を食べてよ。返事はまだこない。





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