心中未遂
嘘吐き。
「ふふっ、愛してるわ」
ルージュで真っ赤に塗られた唇から割って出てきた言葉は甘く、軽く、さらっと、僕の耳に泳いできた。
「ああ」
僕に内緒で知らない男に同じ事を言っている彼女を知っている。その事を彼女は知る予知もないだろう。
切なく胸が痛む。この行き場のない感情はどうすればいいのだろうか。
彼女は長い睫毛で僕を一人分のベットに誘い込んだ。気乗りしないが大きくあいた胸元からたわわな胸の谷間が覗く。唾を飲んだ。
「ねえ」
挑発的に身をよじりながら僕の腕に絡みついた。唇の間から見えた舌は淡くくすんでいるように思えて、その舌も真っ赤にすればいいのになんて物騒なこと考え始めた。
彼女の方へ顔を向けるとどちらかともなくキスをした。触れて離れて目が合って。
「すき…すき、あいし、ンっ」
彼女は「愛してる」と言いたかったのか「愛して」と言いたかったのかわからないが煩いので強引にキスをした。唇を押し割って舌を突っ込み掻き回す。絡めるとかじゃなくて荒らすように。
そうしながら両手で首を締めていく。ゆっくりゆっくり力を加えていくと脈が主張しているのが手に取るように感じる。構わず締めていく。冗談じゃない事に気付いた彼女が焦りをみせる。
息が荒い。彼女は苦しいのかTシャツを剥がすように引っ張ってくる。徐々に力はなくなっていき頬が濡れた。もたれかかってくる彼女を支えながら舌を引き抜いた。
「舌、食い千切っても良かったのに」