かすり傷
空っ風が駆け抜ける。手を擦り合わせて、その隙間に息を吹き込む。ふ、と気が付けばそんな季節になっていた。
まだ葉は色づき始めてはいないものの、すれ違う人のファッション、空気、温度で季節に気付いた。
もう一年の半分が終わっていた。なぜだか急に寂しくなった。こんな季節だからだろうか。人肌も恋しくなった。ついこの間まで何をしなくても汗をかいていたというのに、今は立ち止まっていれば寒さで鳥肌が立つほどである。
足元に冷たい風が転がってきた。ぶるっ、と身を縮こませてみれば自分の事を無意識に抱きしめていた。なにが悲しくてこんな事をしているんだよ。
俺は歩道の真ん中で一人かぶりを振ってまた歩きだした。土の匂いがしてきたら、また俺はこうしてつまらない事を思うのだろう。