日焼け



「あ゙ー、あっつい」
「そうっすねー」


そうっすねー、じゃないわ、と隣にいる後輩になげかけた。そうしたら後輩は困ったように「だって本当に暑いんすもん」と言ってきた。異論はない。確かにそうだった。体感温度は裕に四十度を越えているだろう。熱い息を吐き出したら後輩は私の一歩前を歩きだした。


「オレ、この暑さ以上に、先輩にお熱なんです」


そうして手で顔を扇ぐ後輩が唐突にそう言った。陽射しを遮るように翳していた私の手の平が汗ばみ、やけに滲んだ。やや身長の高い後輩が視線を絡めてきた。なんか変な感じ。思わず足を止めた。

少し距離を置こうとしたらいきなり手首を掴まれて、何事かと顔を上げたらキスされた。触れただけの、可愛いものだった。


「……い…意味わかんないんだけど」


唇が離れてから、瞬きの仕方を忘れてしまって頭が沸騰しそうになって、強がって苦し紛れにそう言えば、そうっすねー、と後輩はまた困ったように笑った。だから、そうっすねー、じゃないわ、と手を振りほどいて逃げるようにその場から離れた。

顔の赤みは、きっと陽射しの所為だろう。





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