病的メビウス



「キミは僕が死ねと言ったら、本当に死ぬんですか」


そう聞いたら表情ひとつ変えずに「うん、死ぬよ」と言われた。絶えない笑顔が不気味さを際立たせる。


「そうですか」
「うん」


刻まれた笑窪の深さに僕は何故だか目を逸らせずにはいられなくなってしまう。はり付けられたような笑顔ではない。表裏こそないだろうが深みのあるその表情。


「では、僕が死なないでと言えば?」
「死なないさ、後追いはするけど」


頼もしい、と言うべきか。惚れ惚れした。僕が何も反応しないから「迷惑だった?」と困ったような、それでも笑って聞いてきた。僕は静かにかぶりを振った。


「僕、キミの為に生きたいって思えた」


そう言えばキミは笑いながら泣き出したのだ。骨の上を走る血管とわずかな筋肉しかない僕の手をとって、キミは、キミの流した涙を拭わせた。






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