悩める青年



生きてる意味を気にした事は何度もあった。自分の存在理由について考えた事も何度もあった。それが厨坊特有の思考であると兄に言われて笑われた。少しムッとして「じゃあ、なんで俺は生きているんだよ」「なんで俺はここにいるんだよ」と、と問うと兄は喉の奥でクックッと笑う。「お前はそんな事を知ったところでどう変わるんだよ」またムッとした。兄は最初から決め付けている、自分が何も変わりやしないって。「分からないじゃん!もしかしたら俺は感動して生き方を変えて難民キャンプに参加するかもしれない」そう言ったところで端から行く気などさらさらなかった。要は出任せ。自分で言っておいて無責任だなあ、と眉を潜めた。兄は溜め息を吐いた。「呆れた、なんか疲れるんだけど」そうして伸びをしてソファーに寝転がった。「………ああそうかよ」誰も見ていないテレビを消した。辺りは一気に静かになった。心臓が脳にあるような気がした。リモコンをテーブルに置く音が煩く聞こえた。部屋の湿度が気になった。兄が寝返りを打った音がした。「…何だかんだ言ったって、テキトーに生きてるんだ、だからテキトーに死ぬ、難しい事考えたって埒があかない……と俺は思う、まあ、…そんなもんだ」背もたれの方に向けられた兄の表情を読み取ることは出来なかったが、なんだか泣いているような気がした。だから俺はそっと毛布をかけた。ああ、そうか。そうして全てを悟った気がした。






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