支える
「好き…好きよ…愛してるわ…」
浮気性の彼をベッドに逃げないようにあの手この手で縛り付けて彼は私がいないと何にも出来ないようにさせた。
「ほら、あーん」
ライ麦パンを一口大にちぎって彼の口元に運ぶ。恐る恐る口が開かれそれを入れる。そうすれば咀嚼しはじめる。ベッドに頬杖をつきながら彼のその様子を眺める。落ち窪んだ彼の瞳から何かが流れた。私はそれを見逃さない。
「ねえ、私を思って泣いているの?」
彼の涙のあとを指の腹で拭き取る。だらしなく開いた口の端からパンの混じった唾液が垂れだした。それも丁寧に拭き取れば彼は静かに首を振るような仕草をした。
「まさか、まだ私じゃない女の事を考えていたの!?ねぇ!どうなの!答えなさいよ!!」
立ち上がって彼の肩を激しく上下に揺さ振った。ベッドから離れないようになっているから耳障りな軋む音をただ立てているようだった。
そうしていれば彼は口から勢いよく咀嚼されたパンが吐き出された。そこら中に撒き散らされた嘔吐物。まだ消化されていないから余計に生々しい。彼は、こうしていつも私を困らす。
「どうして…ねぇ、どうしてなの……私はこうしてまで、貴方を支えているというのに…どうして恩を仇で返すような真似ばっかりするの?……ねぇ、好きよ…愛してるわ…」
乾燥した薄っぺらい唇に自分のを押し付けたら、何故だか急に、泣きたくなった。そんな夜の話。