さよなら



そんな事いわないでよ。

寂しくなるじゃない。


残酷な現実から目を背けようと閉じたら、目蓋の裏にいつもの君が映った。優しくて、面白くって、つまらない事で笑いあって、初めてのセックスは恥ずかしくって何にもしないで終わって、また今度ねなんて言い合ったのに。


電話越しに君が別れを告げる。


何も発しない自分に、君は一方的に喋り、一方的に話を進め、一方的に終わらせた。


なんだこんなもんか。

なんてそんなもんじゃないはずでしょ。


返してと言われた合鍵は郵便受けに入れてほしいだなんて君は言った。もう自分に逢いたくないって言っているのだろうか。電話帳からも消してほしいだなんて君は言った。二回も言った。そんなに繋がりを鎖したいのかなんて、自分を忘れたいのかなんて、念を押して言うほどだなんて。

合鍵を持って家を出た。行き先は君。後ろのポケットに鋭く光る危ない物を隠し持つ。


さよなら。

そんな事いわないでよ。

寂しくなるじゃない。




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