血
冷めた鯛焼きを頬張って騒がしい目覚まし時計を蹴っ飛ばした。激しく壁に打ち当たりガラクタの音をたてながら虚しくも壊れた。其れでもまだ煩い世界に顔を歪ませ無理矢理笑おうとした。鯛焼きを咥えたままだったので腹から割れて餡子が厭らしく出てきた。何故か散々な目にあって恨みだしたい衝動に駆られて、大きく息を吸った。冷静になったところで鯛焼きを見直せば目が合ったような気がして、同じように壁に当てた。其れは餡子を散らすようにして壁に数秒付着してから呆気なく落ちた。肩で息をする。込み上げてくる感情が渦巻く。目の前で真っ白な火花が散る。震える両手で凍えそうな体を擦れば腕の血管に添ってある無数の注射跡に爪を立てた。気が狂いそうな子供の泣き声、警告音、笑い声、サイレン。間違ったミックスに悶えながら腕の痛みから逃げるように目を逸らしたら、其れを名誉の血だと思い込めとの幻聴に傷口に唇を添えた。