エピローグ
始まりがあるから終わりもあると、信じて疑わなかった、あの夏、僕は友人を監禁した。呼び寄せるのは簡単で睡眠薬が入ったお茶を飲ませた。そうして眠った身体に鎖を繋げて、部屋に閉じ込めて、セックスして、感情に任せて暴力を振るってみたり。それが愛だと、言ってみたりした。友人は当初泣いて喚いて、逃げ出そうと鎖で自分を傷つけたりしていたが、時間は何とかしてくれたようで、最近はそんなこともなく、落ち着いている。
今はセックス終えて、横たわる友人の後処理中。自分の精子を掻き出して、微睡む意識の中でも感じている友人が可愛らしくて、愛おしくて。気が付けば、あの夏、言ってしまえば興味本位で監禁したのに、今はこうして、可愛いと、愛しいと、感情を抱いている。
「参ったな」
痩せた身体に浮かび上がっている痣や血管。こんなはずじゃなかったんだ。丁寧に指でなぞって、確かに伝わるヒトの、脆さ。大切な友人をモルモットのように、オモチャのように、嬲って、昂ぶらせて、舞い上がらせて。自分の手首の赤い糸の束を見るたびに、心が狭くなる想いをしている。
ピリオドを打たないといけないと悟っていた。でも恐れていた。どう終わらせるか。そうして自分はどうするか。もう、友人ではいられないのは分かっている。それでも僕は、友人でいたかった。だから、まだ、鎖に繋いでいる。
本当に時間は何とかしてくれたのだろうか。友人を監禁したら、どうなるか、たったそれだけの、つまらない興味に、自分自身が友人に、依存してしまって、またキスをした。
あの興味には飽きがくると、終わりがくると、信じて疑わなかった、あの夏から、懺悔するように手首に印を打ち続けているのは、この話の、エンドの数。
僕はばれないように、ポケットに忍ばせた鋭いナイフで、そっと静脈を裂いた。