屈折
「あのさ、どうゆう死に方したい?」
彼女と学校帰りに寄ったファミレスで、彼女の頼んだイチゴパフェを一口だけ食べさせてもらった時にさりげなく聞かれた。
「死に方?」
冷たく甘ったるい一口分のパフェを咥内の体温で溶かしながら聞き返した。死について考えたことはある。そのたびに怖くなって考えるのを断ち切っていた。
彼女は毛先を指で持て余しながらパフェを食べすすめていく。自分もアイスティーを喉に通す。汗のかいたグラスから伝わる冷たさが気持ちよくてどんどん流しこんでいった。
「苦しめず死ねたらいいかな」
「やっぱりー?」
あたしもおんなじだよ、と彼女は美味しそうにパフェを食べすすめる。あんな甘い物をよく食べれるな、と感心するのも自分だったら三口で胸焼けを覚えてしまいそうだったから。まだ甘ったるい咥内に眉を潜めてアイスティーを飲む。
唐突に彼女が何故そう聞いてきたのかわからない。何かしらの意図があるのだろうけどさっぱり分からない。まさか一緒に逝きましょう、なんて心中を誘われてしまうんじゃないかと内心冷や汗が止まらない。
「なんでそんなの聞くんだよ」
アイスティーの氷をストローで突きながら自然に聞いてみた。彼女は美味しそうにパフェを頬張り、咀嚼し終えてから口を開いた。
「気になっただけよ」
彼女が冷たく笑った、気がした。分からない。表面上は笑っているようにみえるのだが、目が笑っていないように見えたのだ。考えすぎかもしれない。アイスティーを勢いよく吸い込んだ。
「じゃあ、俺と居て楽しい?」
「なによ、いきなり、ああ、そうね」
楽しいよ、とっても。頬杖をつきながらパフェのスプーンの先を向けて細く微笑んだ。歪みも穢れもない純粋な笑みに、悪寒を覚えたのは無理もない。あからさまに嘘だと言っているようなものだったのだから。
「好きな人と一緒にいるんだよ、楽しいに決まってるじゃない」
怪しく上がった口角についていた生クリームが気になった。だからこっそり机の下で中指を突き立てた。